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ラングストン・ヒューズとヘイシャン・ルーツ レイラ・マキャーラ [北アメリカ]

Leyla McCalla  VARI-COLORED SONGS.jpg

大恐慌時代のアメリカを思わせる、オールド・ファッションな服を着た黒人女性。
手にしているギターはギブソンのスタイル-0という、徹底したレトロ趣味。
ビッグ・ビル・ブルーンジーのプロモ写真で有名なギターですね。
これでもうマイってしまって手に取った、レイラ・マキャーラのデビュー作。
話題の黒人ストリング・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップスにいた
チェロ弾きの女性ですね。今はもうグループをやめてしまったようですけれど。

サブ・タイトルに『ラングストン・ヒューズに捧げる』とあるとおり、
ハーレム・ルネサンス期の黒人作家ラングストン・ヒューズの詩に、レイラが曲を付けたアルバム。
デビュー作でいきなり「ラングストン・ヒューズ」なんだから、マジメというか、固いというか。
そのあまりな学究肌ぶりに、付いていけるかしらんと聴く前から心配になったりして。

大学生の研究レポートみたいな味気ない作品だったらヤだなあと思ってたんですけど、
それは杞憂でした。伴奏は、レイラ自身が弾くチェロやテナー・バンジョーに、
ギター、スティール・ギターが控えめにサポートするだけなんですけど、
カサンドラ・ウィルソンにも通じるインテリジェンスのあるアメリカーナ・サウンドを聞かせます。
古謡の語り部に徹したレイラの感情を込めない歌いぶりが、音楽と良くマッチしています。

淡々としたフォーク調の曲が続くなか、
クラーベのリズムでクレオール語で歌われる曲があり、
おや?と思いライナーを読むと、なんとハイチ民謡だそう。
え? なんで?とよくよくライナーを読むと、レイラの両親はハイチ移民で、
レイラが最初に覚えたハイチの曲が“Latibonit” だったんだそうです。

ハイチをルーツに持つレイラが、ニュー・オーリンズへ引っ越して、
ケイジャンやザディコなどのフランス系クレオール音楽に惹かれたというのもごく自然な話で、
クレオールの名ケイジャン・フィドラー、ベベ・キャリエールに
レイラがホレこんでいたというエピソードには、すごく親しみがわきました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-11-21

もう1曲、レイラのヘイシャン・ルーツをうかがわせるのが、“Kamèn sa w fe?”。
CDライナーには、37年12月25日のアラン・ローマックス録音から採ったというクレジットがあります。
おー、さすがですねえ。レイラもアラン・ローマックスのハイチ・ボックスを聴いているのかあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15
ハイチ・ボックスを取り出してみたら、確かにディスク2に収められていました。
女性たちが歌うトゥバドウ(トルバドール)の哀感のある曲で、後半テンポを上げて歌っています。
テンポを上げると、がらりと歌の表情が変わって、そこがまた面白く聞こえるんですけど、
レイラはこの後半部分をCDでは再現していません。

アルバム全編通して聴くと、生硬さが残るとはいえ、
その生硬さもデビュー作という若さゆえと思えば貴重です。
アルバム・テーマのラングストン・ヒューズの影に隠れたもう一つのテーマ、
レイラのヘイシャン・ルーツの方に耳惹かれたデビュー作でした。

Leyla McCalla "VARI-COLORED SONGS : A TRIBUTE TO LANGSTON HUGHES" Music Maker Relief Foundation MMCD142 (2014)
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