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ビギンとメレンゲ バレル&オノレ・コペ [カリブ海]

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マルチニークのサックス奏者バレル・コペは、
ビギンだけでなくメレンゲも演奏したところが、ユニークな存在といえます。
フレンチ・クレオールなのに、フランス語圏のメラングでなく、
スペイン語圏のメレンゲを演奏していたのはなんとも不思議ですが、
フィリップス盤のレパートリーも8曲中6曲がメレンゲで、ビギンは2曲だけでした。

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長年その理由がわからずにいたところ、
今回フレモオ・エ・アソシエが復刻したバレルとオノレのコペ兄弟のリイシュー作は、
『ビギンとメレンゲ』とその謎に迫るそのものずばりのタイトル。
コペ兄弟が活躍した当時のパリでは、
メレンゲが新しいダンス・リズムとして紹介されたばかりで、
コペ兄弟がパリでメレンゲを広めたということを初めて知りました。

CDのライナーによると、パリにメレンゲをもたらしたのは、
グアドループ出身の歌手兼ギタリストのジェラール・ラ・ヴィニだそうで、
55年12月21日に行われた西インド諸島音楽レヴュー<サトウキビ>が最初だったとのこと。
その後、コペ兄弟がそれぞれの楽団でメレンゲを演奏し、広めたんだそうです。
新しいトロピカル・リズムで一丁当ててやろうということだったんでしょうね。

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本CDには、さきほどのフィリップス盤に収録されたバレル・コペ楽団の56年録音8曲に始まり、
56年から59年にかけてオデオンに録音された、
オノレ・コペ楽団の4回のセッション16曲が収録されています。
ぼくはバレル・コペの10インチのほか、3枚のEP(CD未収録)を持っていますが、
お兄さんのオノレ・コペは、今回のCDで初めて聞きました。

二人はマルチニークの音楽一家の生まれ。
10人兄妹の3番目として10年に生まれたオノレは、叔父からクラリネットの手ほどきを受け、
のちにマルチニークに帰郷した元ステリオ楽団のトロンボーン奏者から、
ステリオ・スタイルのクラリネットを本格的に学び、プロとなる後押しを受けたのだそうです。

一方、10人兄妹の末っ子で、20年に生まれたバレルは、
幼い頃オノレがクラリネットを吹く後ろで、2本のスティックで椅子を叩いてはリズムを取り、
のちに本格的にドラムスを覚えたといいます。母親の死後、姉の住むグアドループへ移り、
クラリネット奏者だった義兄アルフレッド・エドメの楽団でドラマーとなり、
わずか14歳でロベール・マヴンジに肩を並べる存在になったのだそう。
バレルがドラムスからサックスに転向したのは、
サックスが上達するマヴンジの様子をみて影響されたのだそうです。

二人は47年にパリへ渡って演奏し、50年からは別々に楽団を率いて活動を始めます。
オノレは58年までパリで演奏活動をしたあと、西アフリカのギネアへ渡り、
首都のコナクリで音楽学校を開いて6年を過ごし、
その後セネガルのダカールに移って4年間クラブを経営したあと、
68年にマルチニークへ帰郷しています。

バレルは50年代にパリで活動を続け、
61年にピエール・ルイのオーケストラへ加わり、
ベルギー領コンゴのレオポルドヴィルで半年間演奏しました。
61年と62年にマルチニークへ一時帰郷してサム・カステンデと演奏し、
64年12月から65年4月まで、アル・リルヴァとともに西インド諸島をツアーをしています。
その後68年にマルチニークへ帰郷し、
有名クラブのル・マニオールで、約20年間演奏を続けたそうです。

[10インチ] Barel Coppet et Ses Antillais "DANSES DES ANTILLES" Philips B76.072R
[10インチ] Barel Coppet et Ses Antillais "DANSES DES ANTILLES" Philips B76.072R [2nd Press]
Barel et Honoré Coppet "BIGUINE ET MERENGUE (1956-1959)" Frémeaux & Associés FA5408
[EP] Barel Coppet et Ses Antillais "CARNAVAL AUX ANTILLES" Philips 432569BE
[EP] Barel Coppet et Ses Antillais "CHANTS DES ANTILLES" Philips 434808BE
[EP] Barel Coppet et Son Orchestre "CARNAVAL ANTILLAIS 1968" Inter Caraibes HFBV10003M
コメント(2) 

コメント 2

えすぺらんさ

そうなんですか50年代にパリでメレンゲ・ブームがあったんですか。そう言えばフランス映画「イヴォンヌの香り」にセリア・クルースのメレンゲが使われていましたね。カリブ地域の音楽交流はだいたい分かりますが、パリを拠点にフランス語圏のアフリカの音楽家との交流もこの頃盛んだったんでしょうか。リコ・ジャズの様なバンドもありますし。
by えすぺらんさ (2014-05-15 22:21) 

bunboni

ああ、音楽マニアのルコント監督の映画ですね。そういえば使われてましたね、懐かしいな。
リコ・ジャズを例に出されているとおり、パリを拠点にフランス語圏のアフリカだけでなく、カリブとも大西洋トライアングルで、当時から密接な関係にありましたね。それは現在もなお脈々と続いています。
最近聴いているコンゴレーロなんて、その典型かも。そのうち記事に書きます。
by bunboni (2014-05-15 22:42) 

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