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ニジェール川を下って【後編】 [西アフリカ]

The Divine River.jpgチャプター8は、ニジェール川を下るシーンや、
サヴァンナを悠然と歩むキリンの姿などをコラージュしながら、
地面にゴザを敷いた上で、
2台のカラバシにクンティギを演奏するシーンに変わります。
チャプター2のシーンと同様の音楽で、
集まった少年少女たちがひとりずつダンスを披露します。
子供たちのダンスが愛くるしく、
巧みな腰使いや脚さばきに見惚れます。

チャプター9は、クンティギとトーキング・ドラムをバックに歌う
ヴァイタルな女性歌手の歌をBGMに、
子羊の解体場が映し出されます。
頭部を落とされ、血抜きされて
子羊がつるされているところや、
子羊の皮をはぐ様子に、内臓を取り出すところなどの
解体作業をカメラは追っています。
側溝にたまった真っ赤な血のかたまりや、
落とされた頭部がごろごろと並んでいるシーンなど、
炎天下で作業をしている映像からは、
むせかえるような匂いがしてきそうです。
このシーンで流れている女性歌手の名前が知りたいなあ。CDは出してないのかしらん。

チャプター10は、ドゴンのバンディアガラの断崖と麓の村での仮面ダンス。
すっかり観光化されたドゴンのダンスは、もはや目新しくなく、
カナガの仮面をつけたダンサーも十数人という少なさでは、正直しょぼいなという印象が残ります。
ただし、トーキング・ドラム2台に太鼓、金属製打楽器を伴奏に、
叫び声のようなかけ声にエコーがかかるサイケデリックな音響は、なかなかの聴きものです。

チャプター11は、小舟でニジェール川を下るシーンをバックに、
エレクトリック・ギターとカラバシによるデザート・ブルースが流れる短いインタールード。
チャプター12は、箒の柄の部分のようなスティックで叩くカラバシ3台とゴジェを伴奏に、
鉈を手に踊り手が武闘のようなダンスをしたり、首を切るような演技をしたりと、
いったい何の儀式なんでしょうね。
ジャケ裏にザルマ人の精霊の憑依儀礼と書かれているのが、このシーンなんでしょうか。
ヴードゥーのような憑依儀礼とはぜんぜん別物に見えますが、はて?
以上本編のほか、ボーナス・トラックとして、クンティギ弾き二人による歌と演奏が入っています。

ホーム・ヴィデオで撮ったようなプロっぽくない映像は、
アマチュアの旅の記録ふうで面白く観れますが、やはり最低限の解説は欲しいですね。
メーカー・インフォには「フォーク・シネマ」と書かれていましたけれど、
最近はこういうロード・ムーヴィー的なドキュメンタリーが流行ってるんでしょうか。
そういえば3年前に観たザンジバル音楽のヴィデオ“ZANZIBAR MUSICAL CLUB” も、
なんの解説もない、イメージ・ヴィデオみたいな作りだったなあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-02-12

サブライム・フリークエンシーズから出たDVDでは、
エチオピアのさまざまな民族を取材した
オリヴァー・ワイアットの“STARING INTO THE SUN” が、しっかりとした映像作品でした。
ポラロイド写真集といった感の分厚いCDブックには、ちゃんと解説も載っていましたしね。

同じ発売元にもかかわらず、本作と制作レヴェルがなぜこれほどまで違うんでしょう。
取材ソースをきちんとテキスト化し、映像内容をわかりやすく紹介することは、
撮影対象の文化に対する最低限の礼儀のはず。
この作品にはそれがまったく欠けています。

[DVD] a film by Hisham Mayet "THE DIVINE RIVER : Ceremonial Pageantry in The Sahel" Sublime Frequencies SF075 (2012)

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