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ムーリッシュ・ロック グループ・ドゥーウェイ [西アフリカ]

Group Doueh  ZAYNA JUMMA.jpg   Group Doueh  TREEG SALAAM.jpg

西サハラのファミリー・バンド、グループ・ドゥーウェイの新作。
以前の“TREEG SALAAM” は、グループが所有する
プライヴェート録音のカセットから編集したおそろしくローファイなシロモノで、
それはそれで生々しくて面白かったですけど、
今作は10年にちゃんとレコーディングしたもの。
音質はマトモで、普通に聴けるレヴェルに仕上がっています。

西サハラのジミ・ヘンドリックスを自認するドゥーエイのギターは、
ジミ・ヘンドリックスというよりも、モーダルなフレーズをうねうねと弾く
ジェイムズ・ブラッド・ウルマーの奏法に近いものを感じさせます。
そう感じるのは、ティニディットという伝統楽器の奏法をギターに移し替えているからで、
ティニディットを弾いている曲と聴き比べると、それがはっきりわかります。

このティニディットという楽器は、モーリタニアの男性グリオが弾くティディニートと同じ楽器で、
そのモーダルな響きも、モーリタニアのグリオが演奏する
ムーア音楽の旋法ブハールと同じものに聞こえます。
ブハールはアラブ音楽のマカームに匹敵するモード・システムで
30以上の調性や旋律の原型を持つものなんですが、こういう解説が
レーベル元のサブライム・フリークエンシーズには、まったくないんですよね。

グループ・ドゥーウェイのリーダーで、
ギターとティニディットを弾くサルム“ドゥーウェイ” バマールは、
ムーア人でグリオの出身なんじゃないかと、ぼくは睨んでいるんですけど、どうでしょう。
真偽のほどは不明ですが、いずれにせよグループ・ドゥーウェイが、
モーリタニアのムーア音楽をベースにしているのは間違いありません。
彼らの音楽を一言でいうなら、「ムーリッシュ・ロック」ですよ。
このあたりをきちんと指摘する人がいなくて、
トゥアレグのデザート・ブルースと同じ音楽のように捉えられているフシがあって、
そりゃ違うぜと、お節介で言いたくなってしまうんです。

サブライム・フリークエンシーズ周辺の紹介記事を読むと、
いつも不満なのが、音楽的な解説が貧しいことなんですよね。
そのかわり、「辺境」だの「プリミティヴ」だの「コズミック・モンド・サイケ」だの、
「民俗ジャンク・サイケ」だの、ええ加減にせえよと言いたくなる無意味な形容詞が文面を躍り、
なんの説明にもなってない駄文に、うんざりさせられることしばしばです。

こういう文を読まされると、無知なまま、よそ様の土地に土足でずかずか踏み込んで、
身勝手な冒険心を満足させている、バックパッカー気質みたいなものを感じ、不快になります。
世界を旅をするのは結構ですけど、
もっと彼の地の文化や歴史をちゃんと勉強してからにしましょうよ。
それがこういう音楽を愛する者の最低限のマナーであり、
相手へのリスペクトを表すうえでも、大事なことでしょ?
これほど情報が溢れる時代に、カルチャー・ショックとか言ってるのは、
単なる不勉強にすぎません。

Group Doueh "ZAYNA JUMMA" Sublime Frequencies SF066
Group Doueh "TREEG SALAAM" Sublime Frequencies SF048
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