匠の民歌歌手 タイン・レー [東南アジア]
すごいな、この人。
オソろしいほど歌唱力のある人で、
オペラ歌手みたいにハイ・トーンを張り上げる歌い方をするんですけど、
それがこの人に関しては、ぜんぜんイヤミにならない。なんでだろ?
というのも、私、ベルカント唱法を聴くとムシズが走る性分なもので、
こういう発声には強い拒絶反応が起きるはずなんですよ。
ですが、なぜかこの人については、そういう嫌悪感をまったく感じません。
ベルカント唱法のようでいて、実はぜんぜん違う発声法なのかなあ。
横隔膜を震わせているところは、同じだと思うんだけど。
そのへんのところ、詳しくはわかりませんが、いずれにせよポップス歌手にあるまじき、
明らかに音楽学校で声楽を勉強しました風の歌手ながら、
憎めない魅力というか、抗しがたい才能を感じさせる人です。
ヴェトナムは音楽学校出身の民歌歌手が、ほんとに多いですね。
以前タイン・レーの3作目を紹介しましたが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-09-26
6作目の本作でも、まことに見事な抒情歌謡を聞かせてくれます。
ドラマティックなバラード主体のレパートリーで、
オーケストレーションも付いたプロダクションで聞かせるサウンドはとかく重くなりがちなところ、
吹き抜ける風のようなすがすがしさを覚え、軽やかさを失わないところが、
タイン・レー最大の魅力といえます。
ヴェトナム情緒をもたらす、弦のゆらぎ音もたっぷりとフィーチャーしながら、
トゥー・マッチになるぎりぎりのところで寸止める上手さで情感を伝える、匠を持つ人です。
Thành Lê " MƠ" Thăng Long no number (2014)
2014-11-03 00:00
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