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香港の李香蘭 [東アジア]

李香蘭.jpg

山口淑子と聞くと、テレビのワイドショー「3時のあなた」に出てる
司会のおばさん(失礼)という子供の頃の記憶が、まず蘇ります。
親世代は、李香蘭という中国名を持つ歌手だったことになじみがあっても、
当時子供だったぼくの世代では、テレビの司会者というのが共通イメージでしょう。
参議院議員になったのはもっとあとで、その頃はぼくは高校生になっていました。

いずれにせよ、ぼくの世代が「李香蘭」の半生を知るのは、もう少しあとのことで、
さらに当時の録音を聴いたのは、もっとあとの90年代半ばになってからでした。
香港EMIの「百代・中國時代曲名典」シリーズで、上海時代曲の名歌手たちの録音が復刻され、
ようやく李香蘭の「夜来香」などのヒット曲を、じっさいに聴くことができました。

先ごろ、9月7日に山口淑子さんが心不全のため亡くなっていたという報に、
思わず李香蘭のCDを棚からひっぱり出したという音楽ファンは多かったと思うんですが、
ぼくが聴いたのは戦前の國語歌謡時代ではなく、戦後の香港録音の方。
ちょうど香港のニュー・センチュリー・ワークショップの「復黑版」シリーズで、
オリジナル盤に忠実な紙ジャケ仕様で、『蘭閨寂寂』がリイシューされたばかりでした。
それは偶然でもありましたけれど、じっさい李香蘭のCDでは、
ぼくはこの『蘭閨寂寂』が一番好きです。
紙ジャケCD化される以前は、
香港EMI盤の『百代・中國時代曲名典17 蘭閨寂寂』で愛聴していました。

本作は、55年の香港映画『金瓶梅』のサウンドトラック盤。
彼女は、日本に命からがら帰国して李香蘭の名を封印したはずなのに、
香港のショウ・ブラザーズ社に熱烈に求められ、李香蘭の名でミュージカル映画に出演し、
52年から58年にかけて中国語圏で「李香蘭」の名をまたも復活させたのでした。

日本の敗戦で軍事裁判にかけられ、死刑になるかもしれないという修羅場をかいくぐって
日本に帰り、日本人の山口淑子として再出発したはずなのに、なぜという思いもしますが、
複雑な事情があったんでしょう。この香港での一時期の李香蘭リヴァイバルについては、
ご自身の自伝でも口を濁したというか、多くを語っていません。

とはいえ、ぼくはこの時期の李香蘭が最高だったと思っています。
歌手として円熟した時期で、気品のある歌声が
ラウンジーな伴奏によって最高に引き立てられていました。
この美しい北京語の発声が香港で強く求められていたというのも、
このレコードを聴くと素直にナットクできます。

李香蘭 「蘭閨寂寂」 Sepia/New Century Workshop NCCPA134-2VD (1955)
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