ジャズ新時代の才媛 エリザベス・シェパード [北アメリカ]
CDショップの試聴機で衝撃を受け、オリジナル盤を求めてカナダにオーダー。
首を長くして、届くのを待っていました。
カナダが誇る新世代ジャズ・ボーカリストというエリザベス・シェパード。
すみません、これまでまったく存じ上げませんでした。
去年グレッチェン・パーラトを知って、ジャズが新時代を迎えたことを実感したものですけれど、
このエリザベス・シェパードの新作を聴いて、ますますその感を強くしました。
アンニュイでミステリアスなムードを持つところがよく似ているお二人。
こういうフワフワとした、つかみどころのない女の歌い手って、
昔は実力のないインチキ歌手の典型みたいなものでしたけど、
いまやそんな手触りの歌がもっともジャズを感じさせるんだから、面白いですねえ。
イマドキのジャズには「オシャレ」という形容詞が、
見下した意味合いのない純粋なホメ言葉になっていることに、隔世の感がします。
さらに、新時代のジャズになくてはならない、新感覚のビートを叩きだすドラマーたちの存在。
このアルバムもオープニング十数秒で、ロマン・トーメのドラミングに持っていかれました。
ポール・サイモンの“50 Ways To Leave Your Lover” での
スティーヴ・ガッドのドラミングに並ぶカッコよさじゃないですか、これ。
ラーネル・ルイスのドラミングにも、引き付けられますねえ。
惜しむらくは、リオーネル・ルエケのギターが参加していること。
ぼくは、こいつのパラパラ、ちまちまと指を動かすだけのギターが大嫌い。
手癖のリックを放り出すだけで、ソロを構成するとか、
組み立てるという意識がぜんぜんない。いつも行き当たりばったり弾くだけ。
今回も、ああ、またかよという相変わらずのギターで、ウンザリしました。
リオーネルのギターを除けば、スティールドラムやカリンバをフィーチャーしたり、
トランペットとモーグがバトルするなど、聴きどころは満載。
そのサウンドの面白さは、インプロヴィゼーションではなく、
流れゆく風景を観るような映像的な美しさにあります。
サウンドの組み立て方が、音をやたらと重ねる油彩的なプログレ嗜好ではなく、
淡彩でさっと一筆書きするような水彩的なセンスもぼく好み。
過度にアーティスティックともならず、
ナチュラルなたたずまいを失わないエリザベス、いいですね。
Elizabeth Shepherd "THE SIGNAL" Linus 270197 (2014)
2014-12-27 00:00
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