メソポタミアの娘 シャザ・ハッスン [中東・マグレブ]
「アラブの春」以後、活動がまったく途絶えていたアラブ歌謡シーンの中核レーベル、
ロターナも完全復活したようですね。
ナンシー・アジュラムやエリッサのようなビッグ・ネームばかりでなく、
中堅・新人歌手もぞくぞくとリリースを始め、活動を再開しています。
一時期、ロターナはCD制作をやめてしまうという憶測が流れ、
旧作の在庫がはければ、フィジカルがなくなるという噂も飛び交っただけに、一安心です。
そんな活気を取り戻したロターナの新作の一枚が、モロッコの女性シンガー、シャザ・ハッスン。
81年カサブランカ生まれ、07年にテレビのオーディション番組で
フェイルーズの「バグダッド」を歌って優勝し、歌手デビューした人です。
シャザの父親はイラク人で、2枚目のシングルからイラク人作曲家の曲を取り上げ、
イラク方言で歌ったところ、これが大ヒット。
続けてイラクの伝統歌をリヴァイバルするなど、イラク・スタイルの楽曲で人気を呼んでいます。
11年のデビュー作に続く2作目の本作でも、
冒頭から湾岸スタイルのハリージで楽しませてくれます。
イラク方言ということはわからなくても、
ハリージ・スタイルにイラクらしさを感じることができますね。
周到なプロダクションに、さすがはロターナの制作とウナらされます。
パーカッシヴに躍動する野趣なハリージと、
ゴージャスな弦オーケストラを鮮やかに絡ませる一方、
伝統楽器とエレクトロ使いのバランスも絶妙で、申し分ありません。
シャザの歌いぶりも成長して、コブシ使いもなめらかになっています。
「メソポタミアの娘」の異名をとるシャザ・ハッスン、
濃密な情熱とクールな現代性をあわせもつ、魅力的なシンガーです。
Shatha Hassoun "WALHANA" Rotana CDROT1891 (2014)
2015-01-28 00:00
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