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イランのウム・クルスーム ガマル・アルモルーク・ヴァズィリ [西アジア]

Qamar ol-Moluk Vaziri.jpg   Ghamar Molouk Vaziri.jpg

ガージャール朝からパフラヴィー朝へと移行したイラン王政時代に活躍し、
「イランのウム・クルスーム」とも呼ばれた伝説的な女性歌手
ガマル・アルモルーク(ガマロルモルーク)・ヴァズィリのリイシューCDがリリースされました。
26年からHMVやオデオンなどへ200枚に及ぶレコードを録音したにもかかわらず、
世界大戦時のレコード会社への爆撃で原盤は破壊され、復刻が遅れたとも言われます。

じっさいSP音源はこれまでほとんどCD化されておらず、
ぼくが知る限り、これまでカルテックス盤1枚があっただけです。
それだけに今回フランスでCD化された2枚組は貴重で、音質が良いのも嬉しいですね。

ガマルは、24年に女性歌手として公の場でイラン初のコンサートを開き、
26年には女性歌手として初のレコーディングを行なっています。
ガマルがエジプトの大歌手ウム・クルスームに例えられるのは、
ウムが父親からコーランを習ったように、ガマルは宗教音楽の歌い手だった祖母から歌を習い、
二人とも幼い頃から公の場で歌を歌う環境で育ち、古典声楽のトップ歌手に上り詰めたからですね。

ガマルが古典音楽を正式に学び始めたのは、
16歳の頃、ある結婚式の集まりで歌を披露していたところ、
タール奏者で古典音楽の巨匠モルテザー・ネイダーヴッドに
才能を見初められたのがきっかけだったそうです。
20年代当時最高の作曲家だったアーレフ・ガズヴィニーも、ガマルのために曲を書いています。

ガマルの黄金時代の録音を収録した本作には、歌曲タスニーフを12曲、
無拍の即興詩アーヴァーズを10曲、有拍の即興詩ザルビー1曲が収められています。
やはりなんといっても聴きものなのは、華麗なタハリールを駆使したアーヴァーズですね。
最高度の技巧を駆使したパワフルなヴォイス・パフォーマンスは、
時代を越える透明な美しさがあります。 

ウムがのちの大統領となるナーセルからも称賛され、
亡くなるまでエジプト国中の人々から愛され続けたのに比べると、
ガマルの輝かしい時期は、若き日のわずか十年程度にすぎませんでした。
36・7年頃を最後にレコーディングの場から遠ざかり、
40年代末には人々の前からも姿を消してしまいます。
晩年はチフスを患い、しゃべることもままならなかったそうで、
最後は孤独のままに息を引き取り、死後3日ほど経ってから発見されたといいます。
王政時代を代表する歌手としては、あまりに悲しい最期でした。

Qamar ol-Moluk Vaziri "LA MUSIQUE CLASSIQUE IRANIENNE" Association Pour Le Developpement De La Musique Du Monde Musulman ADM3-1
Ghamar Molouk Vaziri "PERSIAN TRADITIONAL MUSIC VOL.1" Caltex 2595
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