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弔いのソロ・アルバム エイスネ・ニ・ウーラホーン [ブリテン諸島]

Eithne Ní Uallacháin.jpg

なぜこれほどの作品が、これまでお蔵入りにされたままだったんでしょう。
でも、本当によかった。こうして聴くことができて。
プレイヤーのトレイからCDを取り出しながら、すっかり満たされた心持ちとなりました。
今や伝説ともいわれるアイリッシュの男女ユニット、ラ・ルーの女性シンガー、
エイスネ・ニ・ウーラホーンのゆいいつのソロ・アルバムが、思いがけずに届きました。
97年と99年にレコーディングされ、マスタリングを終え、完パケになっていたも関わらず、
契約上のトラブルでお蔵入りになっていたというもの。

エイネスが単なる歌手としてだけではなく、
実験精神旺盛な音楽家としての才能や、
北アイルランド、アルスター地方の
豊かな伝統に根差した深い音楽性が存分に発揮された傑作です。
ハードカヴァーのCDブックには、ポーリーン・スカンロン、メアリー・ブラック、
カレン・マセソン、マイレート・ニ・ゴーナルらが賛辞を寄せています。

伝統音楽をもとに創作された曲に、
エイネスのご主人でラ・ルーの相棒でもあるジェリー・オコナーのフィドル、
フレットレス・ベース、エレクトリック・ギター、プログラミングがしっくりとなじんでいます。
いわゆるケルティック・サウンドと思わせるトラックや、
レゲエのリズムを取り入れた曲もありながら、
ポピュラリティに迎合した下心などみじんも感じさせない
クリエイティヴィティに圧倒されました。

Lá Lugh.jpg

思えば、こうしたドーナル・ラニーに引けを取らないコンテンポラリー・センスは、
ラ・ルーの得意とするところでもありました。
ぼくは96年“BRIGHID'S KISS” で、
エイスネのクリスタル・グラスのような歌声に魅入られたのですけれど、
マウス・ミュージックからリールになだれこむ演奏など、古楽なども取り入れた深い音楽性と、
コンテンポラリーなセンスが共存する才能にも舌を巻いたのでした。
エイスネの美しい歌も、繊細さだけではなく、柔らかな芯を奥底に感じさせ、
それはお姉さんのパドリギーン・ニ・ウーラホーンとも共通するものがありますね。

長い闘病生活のあとにこれほど素晴らしい作品を完成させながら、
99年に自殺してしまったのは、なんとも惜しまれます。
なぜかこのCDブックにも、ウィキペディアでもエイスネの自殺については触れられていませんが、
長く闘病にあったのは鬱病だったのでしょうか。
残された家族の心痛を察しますが、同時にこの作品を世に送り出せたことは、
エイスネへの最高の弔いとなったと、ファンの一人として思います。

Eithne Ní Uallacháin "BILINGUA" Gael Linn CEFCD206 (2014)
Lá Lugh "BRIGHID'S KISS" Lughnasa Music LUGCD961 (1996)
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