モノクロームなトルコ古典歌謡 ミネ・ゲチェリ [西アジア]
ここのところ、ちっとも休みを取ってないなあと思っていた矢先、
映画の試写の案内を受け取って思い立ち、有休を使い、
『パプーシャの黒い瞳』というポーランド映画を観てきました。
す・ば・ら・し・い・映画でした。
これほど美しいモノクローム映画を、ぼくはこれまで観たことがありません。
場面が変わるたびに、がっちりとした構図の映像が画面いっぱいに広がり、息を呑みましたよ。
ジプシーの一団が馬車で移動していく様子をロング・ショットで捉えた映像など、
バロック美術を思わせる古典絵画のフレーミングを思わせましたね。
映画を観ているというより、重厚なファイン・アートの写真集を、
ゆっくりと時間をかけてめくっているような、そんな映画。
そう、例えるなら、アンセル・アダムスの写真集を眺めるかのようで、
映画というより、動く写真集とでも呼びたくなります。
ジプシー初の女性詩人をめぐる物語の内容そのものより、
映像に心奪われっぱなしの131分でした。
ここ最近、というより、ここ数年、映画館に出かけて観た映画がハズレ続きだったので、
こんなに胸を熱くして映画館を後にしたのは、本当に久しぶりでした。
4月4日から岩波ホールでロードショー、その後全国で順次公開とのこと。
ぜひ観に行かれることをおすすめします。
映画の感動を引きずりつつ、家に帰っ真っ先に聴いたのが、
トルコの女性歌手ミネ・ゲチェリの新作。
第一印象が良くなくて、しばらく放置していたCDなんですけれど、
あの美しいモノクローム映像の感動にふさわしいサウンドのような気がしたんです。
聴き直してみたら、ジャスト・フィットでしたね。
ミネ・ゲチェリといえば、5年前のゼキ・ミュレン集のデビュー作が鮮烈な印象を残した人。
新作も古典歌謡路線というのに飛びついたんですが、第一印象はパッとしませんでした。
あまりに端正というか、平明にさらさらと歌いすぎてて、情感の乏しさは否めません。
でも、あらためて聴いてみると、古典歌謡をここまで軽く歌うのは、現代の情緒なのかも。
ちょっとドライすぎやしないかという最初の印象も、
これこそ現代の古典歌謡の味なんだろうなと思い直したのでした。
Mine Geçili "MİNE’L AŞK" Yavuz & Burç Plakçılık no number (2014)
2015-03-05 00:00
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