ボガ・ハイライフのお話 [西アフリカ]
前回の記事でイワタニさんから、
「ボガ・ハイライフ」とはなんでしょうかというご質問をいただきました。
日本でボガ・ハイライフについて書かれた記事は、拙著のほか皆無だと思うし、
こんなチャンスでもなければぼくも書くことはなさそうなので、話題に取り上げたいと思います。
ガーナは80年代の初め、経済破綻で国家破産の崖っぷちにあり、
世銀・IMFの構造調整プログラムを受け入れ、経済の立て直しを図ろうとしていました。
軍事政権下という強権政治だったからこそ、国民生活に苦痛と疲弊しかもたらさない
構造調整も受け入れ可能だったわけですが、失業中の多くの若者は生活苦に耐えきれず、
ナイジェリアなど近隣国へ出稼ぎに出たり、欧州や北米へ移民として脱出しました。
そうしてドイツへ渡ったガーナ人の間で、チープな打ち込みをベースに、
欧米ポップスを取り入れて生み出されたのがボガ・ハイライフ burgher highlife です。
90年代のボガ・ハイライフは、お粗末すぎるプロダクションが聞くに堪えないシロモノで、
ぼくも50~60枚ボガ・ハイライフのCDを買いましたけど、ほとんど処分してしまいました。
プロダクションのクオリティが上がり、ハウスやドラムンベースなどのクラブ・サウンドも呑み込んで、
ようやく面白くなってきたのが、21世紀を迎えたあたりからでしょうか。
ここに並べた8作あたりは、ボガ・ハイライフの好作といえると思います。
オエネバ・キッシやナナ・トゥフォーなどのスウィートなアーバン・テイストのメロウ・サウンドは、
ガーナ新時代のAORてな感じで、結構気に入っていました。
ただしこの音楽をハイライフと呼ぶのは、どう考えたって無理がありましたね。
コジョ・アンティにいたっては、ティンバランドのチキチキまで取り入れて、
ガーナのR・ケリーかクレイグ・デヴィッドかといった感じでしたからね。
ヒップ・ホップ世代が生み出したヒップライフ(ヒップ・ホップ+ハイライフ)もそうですけれど、
いくらネーミングにハイライフを借りたとて、もはや50~60年代黄金時代のハイライフとは、
まったく別物の音楽で、同じネーミングで呼ぶこと自体、無理筋というもの。
「こんなのジャズじゃない」ならぬ「こんなのハイライフじゃない」式の、
非生産的な世代論争を呼ぶのが関の山ですね。
別名付ける根性つーか、アイデンティティを、若い人には持ってもらいたいもんですが、
いつまでも親のスネかじるドラ息子がはびこるのは、世の常ですかね。
ということで、流行はヒップライフに移り、
ボガ・ハイライフは短命に終わったジャンルでしたが、
あと10年くらいたったら、欧米の物好きディガーたちが、
アフリカン・レア・グルーヴなんつって、騒ぎ出すような予感もなくはないですね。
Rex Omar "FA" RX RXCD004 (1998)
Nana Acheampong "XXL" Owoahene Production MOR0210
Oheneba Kissi "ABC OF LOVE" Owusek Productions OW65-2 (2002)
Nana Tuffour "ABEIKU" Owusek Productions OW66-2 (2002)
Kojo Antwi "DENSU" Freedom Family Music/Quajo ffm08152002-12 (2002)
Daddy Lumba "ME MA AFA WOTRIM NE" Lumba Productions OW65-2 (2002)
Kaakyire Kwame Appiah "EYE GYE" Tropic Vibe Productions CK9501 (2003)
Kwaisey Pee "KROKRO ME" New Era Productions no number
2015-03-25 00:00
コメント(2)
お忙しい中、本当にありがとうございました。
またひとつアフリカ音楽ツーになりましたよ。
若い彼らが、ハイライフなんて音楽を本当に知っているのかなあ。
「ボガ・ハイライフ」なんてネーミングも若者感覚じぁダサイし、
誰かが勝手に付けたみたいな感じですね。
でも音楽的にはダメかもしれないけどエネルギーだけはありそうな気がしますよ。
アメリカポップスなんて見てないで、もっと他に目を向けて欲しいですね。
ドイツ辺りだとなんだろう?
ベートーヴェンやバッハじゃなあ。チェコにポルカがあるなあ。
あとは、トルコ人がたくさんいるはずだから、そこらへんに面白いヒントがありそうな感じだなあ。
アメリカポップス聴いて、ソーセージ食べながらサッカー観ててはダメだぞ!
by イワタニ (2015-03-25 17:09)
それでも、ボガ・ハイライフはこういう記事を書ける推薦CDがありますけど、
ヒップ・ライフに至っては全滅ですね。
これまでヒップライフでCD1枚ちゃんと聴き通せて満足できたものって、ぼくは1枚もありません。
by bunboni (2015-03-25 20:22)