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コンテンポラリー・ヴェトナミーズ・ハイブリッド・ポップ トゥン・ズオンとグエン・レ [東南アジア]

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フーン・タンとの共演で知られるヴェトナム系フランス人ギタリストのグエン・レが、
今度はヴェトナムの男性歌手とコラボしていたんですね。
お相手は、83年ハノイ生れのトゥン・ズオン。
16才でハノイ音楽学院に入学し、人民芸術家クァン・トのもとで学び、
ジャズと民歌をミックスした音楽性を持つユニークなシンガーだそうです。

フーン・タンとの共演や、昨年ぼくが激聴したタン・ニャンのような、
ハイブリッドなヴェトナミーズ・ジャズが聞けるのかと思いましたが、
民歌のようなヴェトナム色は抑え目で、
コンテンポラリー・ジャズ色の濃いサウンドとなっています。

レコーディングはパリで、メンバーはグエン・レのワールド・ジャズ人脈がずらり。
モロッコ人ゲンブリ奏者、カメルーン人ベーシスト、インド人タブラ奏者、
日本人箏奏者など、グエン・レの過去作でおなじみの顔ぶれが並んでいます。
さらに本作では、ヴェトナム側から、ダン・チャン(箏)、
ティウ(笛)、ダン・バウ(一弦琴)ほか5名の演奏家が加わっています。

オーケストレーション含めたアレンジには、グエン・レの得意とする個性的なヴォイシングが
すみずみまで行き渡っていて、グエン独特のサウンド世界を生み出しています。
フーン・タンの諸作でもおなじみの、
ハイブリッドなオリエンタル・コンテンポラリー・サウンドですね。
ダン・バウの響きをエレクトリック・ギターに移し替えたグエン・レのギター・プレイは、
今作でも冴えわたり、ソロにオブリガードにと、要所要所でぴしっとキめています。
いつもながら、ムダなくきっちりと構成したギター・ワークには、ウナらされます。

レパートリーで面白いのは、
ボブ・マーリーの“Redemption Song”、ビョークの“All Is Full Of Love”、
ユッスー・ンドゥールの“7 Seconds” を取り上げているところ。
グエン・レのアドヴァイスによるものか、
はたまたトゥン・ズオン自身のセレクトでしょうか。
主役のトゥン・ズオンの歌は、ややミュージカル調の大仰な歌い方をする人で、
ちょっとぼくの好みではないんですけど、
グエン・レが創り出すサウンドに惹きつけられて、抵抗なく聞けます。

チュニジア、マリ、セネガルのゲスト・ヴォーカルによる、
アラブ・アフリカ・アジアのこぶしの交差も聴きどころで、
文化横断する声をミックスする巧さは、グエン・レ・サウンドの得意技ですね。
無国籍サウンドに聞こえるかもしれませんが、
ヴェトナム人の感性なくして生まれない、スケールの大きなアルバムです。

Tùng Dương and Nguyên Lê "ĐỘC ĐẠO" Dihavina no number (2013)
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