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老いに立ち向かうジンバブウェのライオン トーマス・マプフーモ [南部アフリカ]

Thomas Mapfumo  Danger Zone.jpg

5年ぶりの新作をリリースしたトーマス・マプフーモ。
前作“EXILE” で完全復活を遂げたマプフーモでしたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-04-13
今作は、ヴェテラン・アーティストのひとつの理想像を示す、
素晴らしいアルバムに仕上がりました。

思えばマプフーモは今年で70歳。
老境を迎えるアーティストに求められるのは、
円熟の味わいであったり、老練の技量といったところでしょうが、
蜂起(チムレンガ)を旗印に掲げてきたマプフーモにとっては、
「老い」と立ち向かうのも、またひとつの闘争といえます。

振り返れば、マプフーモの道のりは、傷だらけの栄光ともいえるものでした。
不当逮捕、バンド・メンバーとの死別、自身の闘病生活、
度重なる弾圧によってアメリカへ亡命を余儀なくされた
マプフーモの音楽人生は、まさしく闘争の連続でした。

亡命先のアメリカで出会った若いメンバーを加えることで、
新たな血を注ぎ込んだブラックス・アンリミテッドは、
これまでにない軽快なフットワークを得て、新たな地平を切り開きました。
時に、ショナのディープな精神世界に沈み込んでいく、重厚なサウンドを聞かせていた
ブラックス・アンリミテッドにとって、これは大きな変革だったといえます。

一時は、老いに伴って、よりディープになっていくのかと想像していただけに、
この解放的なサウンドと引き締まったビートは、とてもフレッシュでした。
今作では“EXILE” のサウンド路線をさらに発展させて、
うっすらとオートチューンをかけた曲もあるなど、意欲的な面をみせています。
それでいて、ミックスは生々しさがあり、人工的な音質になっていないところが嬉しいですね。

レパートリーは、これまでのブラックス・アンリミテッド・サウンドを、いわば総括した内容。
ンビーラ・スタイルのエレクトリック・ギターが活躍するチムレンガ・ナンバーに、
ジンレゲエ・ナンバー、ンビーラをフィーチャーしたハチロクの伝統的なショナ音楽と、
バラエティに富んだ内容が、それぞれに深化したシンプルさを獲得していて、ウナらされます。
ファンクやエレクトロな新たな要素を加えつつも、ムダのない軽快な身のこなしが、
ヴェテランでしか成しえない、クールさに繋がっているんですね。

マプフーモの歌いぶりも特に枯れたという印象はなく、
力を抜いて歌ってみても、鋼のような強度を感じさせるところは、
闘争人生のなせる業で、有無を言わせぬ説得力があります。
オリヴァー・ムトゥクジの新作もまさに同様でしたけれど、
派手さや刺激的なサウンドをまとわずに、
これだけ充実した音楽を聞かせる精神性の高さに、圧倒されずにはおれません。
現代のアフリカン・ポップスでもっとも高い境地にあるのが、
ジンバブウェのこの二人なのではないでしょうか。

Thomas Mapfumo and The Blacks Unlimited "DANGER ZONE" Chimurenga Music Company CMCTM001 (2015)
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