フィクションに宿るリアリズム リラ・ダウンズ [中央アメリカ]
リラ・ダウンズ?
あー、フリーダ・カーロの音楽版みたいな人だよねえ、違ったっけか。
苦手なんだよなー、あーゆータイプの歌手。
んなことを、前作が評判になっていた時、口走ったような気がします。
メキシコとアメリカの二つの文化に引き裂かれた自己のアイデンティティを求める、
女性シンガー・ソングライター。その文学少女的雰囲気に、
ぼくには手におえないインテリ・タイプ、と思ってました。
でもでも。
たまたま耳にした最新作。あんれえ? こんなにポップな人だったっけか。
メキシコ先住民のフォルクローレやメキシコ歌謡を、オルタナティヴな作法で装うサウンドが
堂に入っていて、以前ちらと聴いた「頭でっかちな創作物」みたいな印象を一掃したのでした。
う~ん、いいんじゃない?
分裂したアイデンティティを求めて、ルーツを掘り下げながら、
フィクショナルなリアリズムを作り出そうとする屈折したポジションが、
息苦しく感じてたんですけれど、
本作はそこからひとつもふたつも突き抜けた感があります。
長く聞かないうちに、すっかりスケールの大きなシンガーに成長していたんですね。
アメリカとメキシコ、先住民と西欧の文化が軋み合う狭間で悩むのをやめ、
より広い世界から自分の立ち位置を見つめようとする、
開かれた姿勢を体得したんじゃないでしょうか。
フアネスやフアン・ガブリエルをゲストに迎えるなど、
広くラテン世界にアピールするポップス性を身につけたリラ。
突き抜けた先に見える風景が、広々と感じます。
Lila Downs "BALAS Y CHOCOLATE" Sony 888750630827 (2015)
2015-05-02 00:00
コメント(2)
今日、エル・スールから届いた荷の中に、このCDもあったのでさっそく聞いてみました。bunboniさんと同様に、前作までは、私好みではないなぁと見送っていましたが、今回はエル・スールの評判も良さそうなので音を聞いたら「あらっ!いいじゃん!」・・・すぐに注文したわけです。
やはり、ご指摘通りにポップス性が増して、かたぐるしい感じが薄くなりました。
アメリカのEl Haru Kuroiの "SABUNG"が頭に浮かびましたが、彼女の方がいいですね。
by イワタニ (2015-05-02 18:21)
同感です。
以前は、悪い意味での「ワールド・ミュージック」ぽいサウンドに抵抗感を覚えていたんですけれど、本作のプロデュースは大賛成です。
by bunboni (2015-05-02 19:10)