野性と洗練を獲得したヴードゥー・ブラス ガンベ・ブラス・バンド [西アフリカ]
ガンベ・ブラス・バンドの最新作、今回は会心の出来ですねぇ。
7年前の前作“ASSIKO” の出来に納得がいってなかったので、
レーベルを移してリリースした今作の方向性は、大賛成です。
“ASSIKO” の何がいけなかったかって、プレイもアレンジもあまりに優等生的すぎたこと。
もともとこのバンドは、クラシックやジャズの正規教育を受けたとおぼしき、
びしっと揃ったブラス・アンサンブルを聞かせるメンバーたちが揃っているので、
アフリカのブラス・バンドと聞いて想像するような、
ラフでワイルドなところはまったくないんですね。
ベニンの伝統的なヴードゥー音楽をベースにしながら、
それを高度に洗練されたブラス・アンサンブルを聞かせるところが彼らのユニークさで、
04年の“WHENDO” では、そんな彼らの持ち味が発揮されたアルバムとなっていました。
ところが、“WHENDO” の次作“ASSIKO” は、お行儀が良すぎるアレンジの中で、
譜面を読みながら演奏してるような端正さに、がっくりきてしまったんです。
ところが、今作はどうです。
窮屈なアレンジに縛られることなく、
メンバー全員がのびのびとホーンを鳴らしているじゃないですか。
ソロ・パートでも、“ASSIKO” とは比べものにならないブロウを響かせていますよ。
パーカッションを強化して、ベルの響きが耳残りするヴードゥーのリズムを、
これまで以上に押し出しているところも、花丸もの。
6曲目の“Ashé” では、ブラスをお休みして、パーカッションのみの伴奏による
コール・アンド・レスポンスで、本格的なヴードゥーを歌っています。
一方、彼らお得意のアフロビート調ヴードゥーも、今回はオープニングで披露。
ナイジェリアの演劇人ヒューバート・オグンデに捧げたその曲は、
ゆいいつレゴスでレコーディングされ、フェミ・クティもゲスト参加しています。
ちなみに、今回のアルバム・タイトルやジャケットも、
アフロビート色濃いものになっていますけれど、じっさいの中身はこのオープニング曲のみ。
聴く前はやや不安だった、
フランス人キーボード奏者ジャン・フィリップ・リキエルの起用も成功しましたね。
リキエルは、80年代ワールド・ミュージック全盛時代に流行したシンセ音を
いまだにプレイするような人なので、大丈夫か?と懸念したんですが、杞憂でした。
“Vrais Amis” では、アクースティック・ピアノで正統的なジャズの演奏を聞かせますが、
ガンベ・ブラス・バンドの洗練された音楽性とよく調和がとれ、浮いた印象を与えません。
以前より野性味を増し、一方で洗練された音楽性にも磨きを増して、
野性と洗練のバランスがとれたアルバム。
鮮やかなヴードゥー・ブラスの傑作登場です。
Gangbé Brass Band "GO SLOW TO LAGOS" Buda Musique 4734804 (2015)
2015-07-13 00:00
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