トルコ北部黒海沿岸の伝統舞踏ホロン エミネ・ジョメルト、オルハン・カンブル [西アジア]
この夏はホロンがくる!のだそうです。
エル・スールの原田さんのオススメで、聴いてみました。
トルコ北部黒海沿岸のラズ人民謡歌手エミネ・ジョメルトの、
アルバム・タイトルもそのものずばりな『ホロン』。
ホロンは初体験でありますが、こりゃあ強烈なトランス・ミュージックですね。
10分近い長尺の曲ばかりで、前半に歌とコーラスのパートがあるものの、
メインはダンス・パートの後半で、ケマンチェがインプロヴィゼーションを繰り広げます。
両面太鼓ダウルのツー・ビートにのせて、ケマンチェが縦横無尽に弾きまくるんですが、
スリリングな即興を延々と繰り広げていて、このケマンチェ奏者、スゴ腕だなあ。
平坦なツー・ビートの曲と、つっかかるようなビートの曲と、
リズム・パターンは二通りあるようなんですが、なんのエレクトロも用いてないのに、
まるでテクノのように聞こえるって、どーゆーわけなんでしょう。
ヴィデオを見ると、横に並んで踊る手つなぎダンスが、
まるでリヴァー・ダンスみたいと思ったら、
ラズの商人たちが西ヨーロッパまでホロンを伝え、
アイルランドのチェーン・ダンスの起源になったという説もあるんだそうです。
遠くアイルランドまで本当に伝わったのかどうかは別にしても、
ギリシャ、ブルガリア、マケドニア、アルメニアあたりの民俗舞踏って、
こういう横並びで踊るステップ・ダンスが多いですよね。
それにしても、ケマンチェ奏者オヌル・オスカンの超絶技巧はスゴイです。
旋回するメロディを延々反復するかと思えば、ぱっと場面展開して、
一足飛びに跳躍して高いキーで別のメロディに移っていったりと、
まさしく変幻自在。これで踊ったら、トランスしそうですね、ほんとに。
ケマンチェとダウルのたった二人で、
これだけスリリングな演奏を繰り広げる天然ミニマル・トランスもすごいんですが、
そこに、オマール・スレイマンのダブケもびっくりなシンセを取り入れ、
エレクトロニック・ダンス・ミュージックに仕立てる輩までいるんですね。
それがこちらの、オルハン・カンブル。
バグパイプのトゥルムが響き渡り、古風な伝統音楽が始まるかと思いきや、
そこに打ち込みの四つ打ちが滑り込み、さらにケマンチェが絡んでくるというオープニング。
歌がこれまた素っ頓狂で、コーラスとともに、ホイ、ホーイ、ホ~イ!と威勢のよいかけ声。
このキテレツなキャラは、イー・パクサといい勝負。ポンチャック・ホロンか?
バグラマーなども登場して、サウンドはけっこう伝統色豊かなんですけれど、
ドラムマシンの強烈なビートが耳残りします。
一方、打ち込みを使わない伝統様式の演奏では、
ハルク(民謡)歌手としての実力をオルハンは聞かせていて、
タハリール的な技巧なども披露しているんですけれど、
やはり面白いのは、エレクトロ・ポンチャック・ホロンの方ですねえ。
肩や手を組んだ男性もしくは女性同士が一列ないし半円に並んで踊るホロンは、
前かがみになって足を投げ出したり、突然じゃがみこんだりと、結構激しいダンスで、
これは黒海で捕れるいわしが、海で泳いでいる時に突然網にかかり、
もがく様子を表しているのだとか。
リゼ、トラブゾンといったあたりの黒海地域にも行ってみたくなりますね。
Emine Cömert "HORON" AK Sistem no number (2014)
Orhan Kambur "CURCUN ELA : SÖZLÜ TULUM HORON" Senseç Müzik no number (2014)
2015-07-27 00:00
コメント(4)
しかし、こんな音楽をどうやって探し出してくるのでしょうか?
センス抜群のエルスール店長らしい推薦盤ですね。
一歩間違えれば、誰も聴いてくれないようなスレスレのところ。こんな冒険心があるお店はエルスールだけでしょう!
本当にホロン来るのか?とこっちが心配になります。
あっ!店長、予算がなくてこのへんまだ買ってません!
スミマセン!
by イワタニ (2015-07-27 13:10)
ひたすらサンプル聴いて、YouTube観ての探索の賜物でしょう。ありがたいこってす!
by bunboni (2015-07-27 13:59)
ホロン、凄くいいです。
聞いていて、頭の芯が痺れて来ます。
リズムの躍動感、不思議なダンスと民族衣装。
これは実際に観てみたいですね。
ああ、トルコ(共和国)に行きたい。
by おぎてつ (2015-07-29 01:46)
まだまだ知らない音楽やダンスが、世界にはたんまりありますね。
by bunboni (2015-07-29 09:30)