無為の音楽 DJまほうつかい(西島大介) [日本]
どういう風の吹き回しか、魔が差した(?)のか、わかりませんが、
生まれて初めてアンビエントのコーナーでCDを買いました。
DJまほうつかいという、本職は漫画家である西島大介の作品。
この人の漫画を読んだことはないんですけれど、
どこかで見たことがあるようなイラストに目が留まって、手に取ってみたら、
西島氏の直筆ドローイングが入ってたんですね。
そのドローイングに惹かれて、聴いてみたくなったんでした。
試聴してみると、ピアノ・ソロのアルバムで、
冒頭の即興曲の無為な表情に引き込まれました。
メロディがあるような、ないような、モチーフをそのままフレーズにして紡がれる曲。
手探りで鍵盤を押さえていくような演奏は、幼児が初めて音の出る楽器に接して、
驚き楽しむ無邪気さと共通するところがあります。
こういう無為な音楽を成立させるのって、とても難しいと思うんですよ。
ピアノの上達とともに、こういう素朴な音列を弾いて楽しむことを、人は忘れがちだし、
達者な演奏家が、あえてこういう「ヘタウマ」な音楽をやると、
作為のいやらしさがどうしてもつきまといます。
上手く弾きたいとか、きれいに弾きたいとか、人を感動させたいとか、
そういった雑念を取り払って、音を出すことそのものに没入するのは、
そうたやすいことではありませんよね。
キース・ジャレットに代表される、ナルシシズムの塊みたいな自己陶酔型のピアノは
虫唾が走る性分なので、現代音楽だろうが、アンビエントだろうが、フリー・ジャズだろうが、
こういう音楽はほとんど受け付けられないんですけれど、
この人のピアノを抵抗なく聴けたのは、無為の音楽に徹していたからだと思います。
乾いた叙情の伝わる曲や、愛らしさやせつなさがまじりあった曲も、
しみじみとしていいですね。
全編、無為の音楽に透徹された演奏かといえば、
3曲目の後半や6曲目の一部に、自意識が立つような場面もないじゃないですけど、
ぼくは、この人の演奏、とても気に入りました。
DJまほうつかい(西島大介) 「LAST SUMMER」 ウェザー[ヘッズ] HEADS207 (2015)
西島大介直筆ドローイング
2015-09-19 00:00
コメント(8)
>キース・ジャレットに代表される、ナルシシズムの塊みたいな自己陶酔型のピアノ
同感です。所謂スタンダーズ・トリオでも「何であんなに同じ様なフレーズを、延々と繰り返すのだろうか?」と訝る場面があります。
by ペイ爺 (2015-09-25 22:35)
音楽にせよ、文学にせよ、なんにせよ、スカしてるヤツが大っきらいな性分なもんで。
by bunboni (2015-09-25 22:46)
失礼な質問だったら、ごめんなさい。bunboniさんは村上春樹はどう思われますか。もしかして、お好きではないのではと。
by sugi (2015-09-26 10:34)
あれ、なんで、わかっちゃいました? ご明察の通りです。
村上春樹の小説の文体は、耐えられませ~ん。エッセイはいいのにねえ。
ハルキストを自称する人にも虫唾がハシります。
以前、「思春期こじらせてるようなヤツが好きな作家」とか言ったら、
暴言だとキューダンされたことがあります。図星でしょ(笑)。
by bunboni (2015-09-26 11:20)
やはりそうでしたか。ぼくもアンチ村上なので、同じ匂いを感じていました。bunboniさんに親近感が増して嬉しくなりました。記事と関係のない質問で、失礼しました。
by sugi (2015-09-26 11:46)
ブログでも書きましたけど、キース・ジャレットに関しては、マイルスのバンドでエレピやオルガンを弾いているのは、僕は結構好きですよ。かなりファンキーなのもあるし。『ケルン・コンサート』とか『サンベア・コンサート』みたいなソロ・ピアノものは、僕も耐えられませんけど。昔、ジャズ喫茶で『サンベア・コンサート』をリクエストした客がいて、神経を疑いましたね。あんなマスターベションみたいなのは、自分の部屋で一人で聴けばいいのに。
by としま (2015-09-26 18:25)
ぼくも初期のキースは好きですよ。チャールズ・ロイドの"FOREST FLOWER" なんて最高ですね。
by bunboni (2015-09-26 18:34)
チャールズ・ロイドのところでのはいいと思いますけど、キース・ジャレットのリーダー作は『サムウェア・ビフォー』なども、あまり好きじゃないですねえ。80年代以後のスタンダーズとそんなに違わない気がします。
やっぱり、マイルス・バンドでのエレピでっす!(笑)
by としま (2015-09-26 18:56)