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恋物語歌い レー・クエン [東南アジア]

Lệ Quyên & Thái Thịnh  CÒN TRONG KỶ NIỆM.jpg

んも~、ホメちぎるヴォキャブラリーを使い果たしちゃって、なんも言えませんよ。
ティナリウェンとこの人くらいじゃないかなあ、そんな感想を持つのは。
ヴェトナムが生んだ世界最高のバラディアー(おぉ、そこまで言い切るか、自分)、
レー・クエンの新作です。ヴェトナムで3月に発売され、届くのを楽しみにしておりました。

今回も、前作“KHÚC TÌNH XƯA 3 : ĐÊM TÂM SỰ” 同様、
ホルダーケース仕様の豪華パッケージの中に、
歌詞カードが美麗フォトカードと裏表になって9枚入っておりますよ。
艶やかなレー・クエンのお姿、お目にかけましょうね。

Lệ Quyên 2016.jpg

ここのところ、ヴォトナム戦争前のヒット曲や作曲家の作品を
取り上げる企画が続いていたレー・クエンですけれど、
新作は現代の作曲家とコラボレートしたアルバムとなりました。
共同名義となっているタイ・ティンがその人で、ゼロ年代から頭角を現している作曲家とのこと。
ロマンティックなラヴ・バラードを書く人で、
その古風な作風は、レー・クエンが歌うのにハマリ役といえます。

ヴェトナムでボレーロと表現されるドラマティックなバラードを中心に、
タンゴにアレンジした曲や、伝統歌謡のメロディを取り入れた曲もあるなど、
その仕上がりは、ノスタルジック路線のアルバムと変わらぬ内容になっています。
すでにレー・クエンは、昔の曲も今の曲も同じように歌いこなすことができて、
古い曲に新たな息吹をもたらすバラード表現が完成しているんですね。
アルバム制作面でも、ヴェッタン・スタジオの優秀な伴奏陣によるプロダクションは
今回もスキがなく、文句なしの充実作となっています。

恋愛を歌う女性歌手は、世界に星の数ほどいても、その多くが恋愛を「説明」するばかりで、
「物語」にして歌える歌手は、ほんの一握りしかいません。
多くの凡庸な歌い手は、恋につまらない具体性を持ち出して、
ラヴ・ソングにスケール感を生み出せないばかりか、貧相にしてしまいます。
才能のある歌い手は、些末な現実で恋模様を語るのでなく、
普遍の物語に膨らませて歌う術を知っています。

「電話帳を歌っても感動するだろう」と表現されたのは、エディット・ピアフでしたけれど、
レー・クエンもまさにそれと肩を並べるクラスの歌手になったことを、
わずかな息づかいまでもコントロールしつくしたその歌いぶりに実感します。

Lệ Quyên & Thái Thịnh "CÒN TRONG KỶ NIỆM" Viettan Studio no number (2016)
コメント(4) 

コメント 4

としま

僕んちにも、他のポール・ボウルズのモロッコ録音ボックスなど15枚ほどと一緒に今日届きまして、いの一番にこのレー・クエンを聴きましたが、こりゃもう素晴しすぎますね。ウットリする以外にすることがありませんし、言葉も出てきません。

ご指摘のタンゴ風は五曲目ですね。他これまたご指摘のようにヴェトナム民俗色の出ているのが二曲ほど。そういうローカル・カラーが普遍的なポップス色とほどよく溶け合っていて、言うことなしです。

敢て難点を探せば、たったの40分ほどしかないことで、聴始めた時は、こんな素晴しいのだったら一時間くらい聴きたいぞと思ったんですが、聴終えてみると、歌の味わいがあまりに濃厚で、一度聴いてお腹一杯になっちゃいました。

それはそうと、この記事本文中「ヴェトナムでボレーロと表現される」ではじまる一段落が丸ごと重複しています。
by としま (2016-05-12 18:44) 

bunboni

コーフンのあまり、文が重複しちゃった、なんちて。
あわてて記事を書いて、せっせとジャケットとフォトカードをスキャンして
ほかの記事ぜ~んぶを後送りさせて、アップしましたよ。
さぁ、これで4か月は最低、毎日レー・クエン漬けの日々が始まります!
楽しみましょうねえ。
by bunboni (2016-05-12 20:38) 

としま

封入されているそのフォト・カードに映る彼女の姿がなんとも艶っぽくて、聴きながら眺めていると、もうたまりません。僕も最高潮に興奮してしまいます。

エル・スールで初回入荷分が一瞬で完売したというこの2016年作、エル・スール界隈やその他一部ではこれだけ人気で評価も高いのに、なぜか日本の音楽ジャーナリズムでは誰一人彼女のことを採り上げませんねえ。不思議です。こんなに素晴しい歌手は日本語メディアでもどんどん紹介すればいいのになあ。そうしたら日本盤が出るかもしれないし、ひょっとして来日公演が実現するかもしれないのに。
by としま (2016-05-12 20:45) 

bunboni

これまで、レー・クエンはじめヴェトナムのシンガーのCDを『ミュージック・マガジン』誌上で熱心に紹介してきたつもりですけど、ぜんぜん反応ないですからねえ。
だいたいヴェトナム盤を日本盤で出そうとする会社が1社も出てこないし、ディストリビュートすらしようとしないんだから、そのやる気なさたるや、なんだか、もう、ねえ。
レー・クエンもMM誌で毎回取り上げたいくらいなんですけど、ぐっとこらえているんですよ。
by bunboni (2016-05-12 21:07) 

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