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生々しく土臭い古典音楽 アリム・ガスモフ [西アジア]

Alim Qasimov  MORQE SAHAR.jpg

ポピュラー音楽とは別次元で、魂を揺さぶられる音楽があります。
ぼくにとっては、アゼルバイジャンの古典音楽ムガームがそのひとつ。
イランで発売された、ムガーム当代最高の歌手
アリム・ガスモフの新作DVD付2枚組CDが素晴らしくって、
ひさしぶりにアリム熱が再燃してしまいました。

イラン北西部タブリーズでのコンサート・ライヴを収録したものなんですが、
DVDでのアリムのパフォーマンスが絶品なんですよ。
いまやアリムは世界各国に招かれるようになりましたけれど、
住民の多くがアゼルバイジャン人のタブリーズは、
いわばホームグラウンのようなものだから、
リラックスしてのびのびと歌うには、最高の環境だったんでしょうね。

タイトルの「モルゲ・サハル」は、イランの古典声楽の大物シャジャリアンが歌った
マーフール旋法のタスニーフだとのこと。
でも、ここではもちろんペルシャ語ではなく、アゼルバイジャン語で歌っています。
シャジャリアンが歌ったというそのタスニーフは未体験ですけれど、
聴かずしても、アリムの方がぜったい素晴らしいだろうという確信が、ぼくにはあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

アリムの歌をバックアップするのは、
タール、ケマンチェ、クラリネット、ダヴル(太鼓)の4人組。
ネイじゃなくて、クラリネットを使うところが面白いですね。
曲によってはネイも使っていますが、
メインはクラリネットで、トリッキーな音をアクセントに使ったりして、効果をあげています。

太鼓も、イランならダウルじゃなくトンバクを使うはずだから、
こんなところがイラン音楽とアゼルバイジャン音楽の違いなのかなあ。
あと、ジャケットでアリムが蛇皮のダフを持っているのに目を奪われたんですが、
DVDでは普通の皮のダフを使っていました。
蛇皮のダフなんて初めて見ましたけど、平手で叩いて痛くないんでしょうか。

現在のイランの音楽家によるタスニーフより、アリムのムガームの方に親しみを覚えるのは、
イランほど過度に洗練されていないからですね。
アリムには民俗的な土臭さがたっぷりあって、
イランのタスニーフを歌っても、なまなましさを感じられるところが一番の魅力です。

歌の主旋律に装飾していく各楽器のフレーズが、
歌の強弱に合わせて当意即妙に応答していくさまは、古典音楽特有の優美さですね。
クラシックでいうところの、ピアニッシモからフォルティッシモまで自在に変化するダイナミクスと、
微分音を多用する音の揺らぎが、時に繊細に、時に嵐のように音楽を波立たせます。
そうした演奏の中で、アリムがタハリールを炸裂させれば、もう恍惚となるほかありません。

[CD+DVD] Alim Qasimov "MORQE SAHAR : TABRIZ CONCERT" Barbad Music no number (2014)
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