ジャズ新時代を先取りしていたエスビョルン・スヴェンソン E.S.T. [北ヨーロッパ]
スウェーデンのエスビョルン・スヴェンソン・トリオを継ぐかのような新世代ジャズが、
最近目立つようになってきたと思いませんか。
UKのママル・ハンズとか、日本のフォックス・キャプチャー・プランとか。
エスビョルン・スヴェンソンといえば、
キース・ジャレットの影響下のピアニストという立ち位置から、
一歩も二歩もハミ出たポスト・ロック的なサウンド・メイキングを成し遂げた人として知られ、
大胆なリズム処理とクラシックのハーモニーを融合したジャズとして、
一時期注目を集めましたよね。
ぼくもその割り切りのいい、わかりやすい迫力に興味はおぼえつつ、
いかにも白人的な音楽性というか、北欧ジャズらしいクラシカルな美しさは、
心底から惚れ込めるタイプのジャズではありませんでした。
正直言って、ECM作品にありがちな、アタマで感心はしても、
カラダは悦ばないタイプのジャズの典型というか。
そのため、従来のジャズ観をはみ出す新鮮さを感じつつも、
その後まったく聴かないままとなっていたんですが、
10年ぶりに聴き返してみたら、
あれ? いいじゃん!と、聞こえ方ががらり変わってしまったのに、ビックリ。
ライヴ盤のグルーヴ感たっぷり、ダイナミックな演奏に、カラダの芯を揺さぶられました。
昔聴いた時は、昂揚感あふれる演奏にも、
こういうのが好きな人はタマらないんだろうなという、醒めた感想を抱いていたのに、
どうしたことでしょう。素直に盛り上がれちゃって、ちょっと自分でも不思議な気分。
ママル・ハンズ、ゴーゴー・ペンギン、フォックス・キャプチャー・プランのような、
少女趣味なおセンチ・メロディに馴らされたせいなのかなあ。
どうもブルー・ノート育ち(レーベルにあらず、スケールの方ね)の人間には、
クラシカルなメロディの美しさって、奥行きがないというか、
深みがないように捉えがちなんですけど、
それって、昔ながらの黒人ジャズ好きの思い込みというか、
偏見にすぎませんよね。あらためて反省させられました。
現代のジャズがグローバル・ミュージックとして多角的に拡張している今、
エスビョルン・スヴェンソンを聴き直すことによって、
ジャズの聞こえ方が変わるという、いみじくもフレッシュな体験となりました。
E.S.T. (Esbjörn Svensson Trio) "SEVEN DAYS OF FALLING" ACT Music ACT9012-2 (2003)
E.S.T. (Esbjörn Svensson Trio) "LIVE IN HAMBURG" ACT Music 2CD6002-2 (2007)
2016-08-26 00:00
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