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テレコ・テコからサンバランソへ オルランジーヴォ [ブラジル]

Orlanndivo Bossa, Samba E Balanco.jpg   Orlann Divo  A Chave Do Sucesso.jpg
Orlann Divo 1963.jpg   Orlann Divo  Samba Em Paralelo.jpg

おー、ようやくブラジルで復刻されたか。
ずいぶん時間がかかりましたねえ。
ブラジル60年代に人気を博したバランソ歌手、オルランジーヴォのムジジスク盤3枚を、
ジスコベルタスがオリジナル・フォーマットで完全復刻。

01年にイギリスのホワットミュージックが復刻して、話題を呼びましたけれど、
ブラジル本国での復刻は、これが初。
バランソ時代の立役者エジ・リンコルンのムジジスク盤復刻の6CDボックスが出て、
オルランジーヴォの復刻を期待する記事を書いた時から、6年も経ってしまったんだなあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-06-08
そのオルランジーヴォ、今年の2月8日に亡くなっていたんですね。知りませんでした。

オルランジーヴォは、58年に作曲家としてプロ・デビューし、
のちに歌手としてエジ・リンコリンのグループに迎えられ、
61年にムジジスクからレコード・デビューした人。
ボサ・ノーヴァの時代に花開いたバランソ、
そしてオルランジーヴォが称したサンバランソは、
30年代のルイス・バルボーザやシコ・モンテイロなど、
街のダンサブルなサンバの流れを汲んだものでした。

62年のデビュー作“A CHAVE DO SUCESSO” に収録された“Amor Vai E Vem” を聴けば、
軽妙なマッチ箱のリズムに、シコ・モンテイロのテレコ・テコが
ちゃんと受け継がれているのが、聴き取れますよね。
ルイス・バルボーザやシコ・モンテイロの時代は、
ショーロの楽団が伴奏をつけていましたけれど、時代が下った50年代になると、
シコ・モンテイロの後輩にあたるジョルジ・ヴェイガたちは、
管楽器を含む大編成のガフィエイラの楽団が伴奏をつけるようになりましたけど、
バランソはオルガンを中心に、フルート、ギター、ドラムス、パーカッションという、
スモール・コンボによる軽やかで涼しげなサウンドが、
ボサ・ノーヴァの時代にマッチしたんでした。

ムジジスク時代の3作は、デビュー作とセカンドがエジ・リンコルンのアレンジでしたけど、
3作目はエジ・リンコルンの名が消え、
サックスがソロを取るなど、サウンドが華やかになっています。
1・2作目とは別のジャズ・サンバのミュージシャンを起用したと思われ、
ドラムスがやかましくって、これ叩いてるのエジソン・マシャードなんじゃないかな。
そのせいか3作目はバランソというより、ジャズ・サンバ色が強くなりすぎた感があります。

ムジジスク時代では、やっぱりセカンドが一番でしょう。
オープニングの“Samba No Japão” なんて、細野晴臣の『泰安洋行』ムード満点ですよね。
木琴や月琴ふうな音色のバンジョー(テナー・ギター?)をフィーチャーして、
偽オリエンタルなリフをまぶし、イントロとエンディングには、お約束の銅鑼も鳴りますよ。
ちなみに、このムジジスク時代、オルランジーヴォはワン・ワードではなく、
「オルラン・ジーヴォ」と名乗っていて、「オルラン」の n もダブルだったんですね。

Orlandivo  Copacabana.jpg

オルランジーヴォは、60年代にこの3作を残してレコーディングから離れてしまい、
77年になってようやく、ジョアン・ドナートのアレンジで、
セルジオ・メンデス・マナーのポップなアルバムを1枚作ります。
キュートな女性コーラスをフィーチャーしたこのアルバムでは、
自作曲以外にも、ボサ・ノーヴァの定番曲“A Felicidade” を歌ったりと、
サンバランソのエッセンスは聴き取りにくくなりますけど、
ソフト・ロック・ファンが再評価したとおり、
オルランジーヴォらしいポップ・センスが発揮された名作でした。

Orlandivo  Sambaflex.jpg

でも、ぼくがオルランジーヴォで一番好きなのが、
05年になって出した“SAMBAFLEX”。
このアルバムは、テレコ・テコからサンバランソに繋がる、粋なサンバを現代に復活させ、
オルランジーヴォの集大成といえるアルバムになっていました。
シコ・モンテイロの代表曲“Boogie Woogie Na Favela” を取り上げて、
ロカビリーやヒップ・ホップまで取り入れたアレンジで歌い、
オルランジーヴォの遊びゴコロあふれる音楽性が見事に発揮されていましたね。

生涯わずかこの5作しか残さなかったオルランジーヴォですけれど、
ノエール・ローザから脈々と受け継がれる、
街の粋なサンバの正統派として、もっともっと評価されてほしい人です。

Orlandivo "BOSSA, SAMBA E BALANÇO" Discobertas DBOX62
Orlann Divo "A CHAVE DO SUCESSO" Musidisc/Discobertas DB464 (1962)
Orlann Divo "ORLANN DIVO" Musidisc/Discobertas DB463 (1963)
Orlann Divo "SAMBA EM PARALELO" Musidisc/Discobertas DB465 (1965)
Orlandivo "ORLANDIVO" Odeon/EMI 541574-2 (1977)
Orlandivo "SAMBAFLEX" Deckdisc 22058-2 (2005)
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