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新時代YO-POP アデクンレ・ゴールド [西アフリカ]

Adekunle Gold  About 30.jpg

つい「アンドリュー・ゴールド」と言いまつがってしまう、
ナイジャ・ポップのニュー・スター、アデクンレ・ゴールド。
2年前に大ヒットを記録したデビュー作“GOLD” に続く新作は、
70年代西海岸ポップをホウフツとさせる爽快なポップ・アルバムで、
アンドリュー・ゴールドの言いまつがいも、まんざらでないかも。

オープニングから、ふくよかに弾むトーキング・ドラムのビートにのる、
抜けるような青空の広がるサウンドに、思わず眩暈をおぼえました。
スケール感のある、こんなに爽やかなメロディが、喧噪と渋滞にまみれた
レゴス出身の若者から生み出されるなんて、にわかに信じがたいほど。
こういう作風を持ったヨルバ人ソングライターが登場するとは、
想像だにしませんでしたねえ。

少年時代はサニー・アデやエベネザー・オベイに夢中で、
教会のジュニア・コーラス・グループに加わり、
15歳で初めて曲を書いたというアデクンレ。
そんな経歴を表わすように、アデクンレが書く曲には、
ヨルバの古謡やジュジュ、ハイライフの影響あらたかなメロディがふんだんで、
クラシックなハイライフの薫り高い‘Mama’には、オールド・ファンも頬がゆるむはず。

ジュジュから受け継いだ軽妙な歌い口も魅力なら、
歌詞は英語でも、コーラスがヨルバ語で歌われる楽曲、
そこかしこにフィーチャーされるトーキング・ドラムなどなど、
サウンドのはしはしにヨルバ色が色濃くにじみます。

とはいえ、このアルバムでまずハートをつかまれるのは、サウンドのフレッシュさでしょう。
マリブのビーチやサンセット・ブルヴァードといった西海岸イメージが浮かぶ、
アーバナイズしたシティ・ポップ・センスのサウンドスケープには、誰もが魅せられるはず。
甘酢っぱい若さに溢れた音楽には、ヒップ・ホップやグライムの影はなく、
近年のナイジャ・ポップで盛り上がるアフロビーツとは、
一線を画したサウンドになっています。

ヌケのいいサウンドと、軽やかなリズムの心地よさは、
今年初めにホレこんだシミと、テイストがよく似てますね。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-02-07
そういえば、シミのアルバムにもアデクンレがゲスト参加していたし、
このアルバムでもクレジットはないものの、‘Pablo Alakori’には、
シミの声がはっきりと聴きとれますよ。
なんでも二人は恋仲だそうで、ロンドンで5月に本作のお披露目コンサートを行った時にも、
ステージにシミが登場して、アデクンレと一緒に歌ったそうです。

異色のトラックは、シェウン・クティをゲストに迎えたアフロビートの‘Mr. Foolish’。
これまたクレジットはありませんが、分厚いホーン・アンサンブルやトラップ・ドラム、
パーカッションなどには、エジプト80のメンバーが参加してるんじゃないでしょうか。
こういう曲も入ることによって、アルバムがピリッと締まります。

アデクンレは自身の音楽を「アーバン・ハイライフ」と称しているようですけれど、
ぼくは、新時代YO-POP(「ヨルバ・ポップ」の意)と呼びたいなあ。
ヨー=ポップは、ジュジュ・シンガーのセグン・アデワレが
80年代に打ち出したスタイルだったんですが、当時のジュジュ・シーンでは、
ほとんど広まらずに消えてしまいました。
今のナイジャ・ポップの中で、アデンクレのスタイルこそ、
ヨー=ポップの名にふさわしいものはないと思います。

Adekunle Gold "ABOUT 30" Afro Urban no number (2018)
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