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ターラブの温故知新 マトナズ・アフダル・グループ [東アフリカ]

Matona’s Afdhal Group.jpg

ターラブは、アフリカとアラブとインドが出会ったハイブリッドな歴史を持つ音楽。
そこに、ジャズやクラシックなど西洋の音楽も取り込んでみれば、
より複雑なアラベスク文様をみせるターラブになるんじゃない?なんて思ってたら、
そんな期待に応えてくれる、素晴らしい作品が登場しました。

ノルウェイのジャズ・ミュージシャンが、ザンジバルのターラブの音楽家と出会い、
ターラブとジャズを互いに教え合いながらグループ活動を続けてきたという、
マトナズ・アフダル・グループ。
ブッゲ・ヴェッセルトフトが新たに発足させたレーベル、
OK・ワールドからのリリースです。

少し前に、ノルウェイ放送局管弦楽団と
ザンジバルのターラブの音楽家たちが共演したアルバムが出ていましたけれど、
そこにも参加していたウード奏者で歌手の
ムハンマド・イサ・マトナ・ハジ・パンドゥを中心に、ヴァイオリン、サックス、ギター、
ベース、ドラムスの5人のノルウェイ人ジャズ・ミュージシャンが集まったのが、
マトナズ・アフダル・グループです。

初めてのセッションがとてもうまくいき、ご満悦となったマトナが思わず発した一言、
「アフダル」(アラビア語で「最高」の意)を取って、グループ名にしたんだそう。
なるほどそのエピソードがよくわかる演奏ぶりで、
ノルウェイ勢がターラブ・マナーに寄り添い、
両者の音楽性を見事にブレンドしています。
ヴァイオリンの女性がスワヒリ語で歌っているのも、堂に入ってます。

最近は、ジャズとローカルなフォークロアとの融合が、
無理なく行われるようになりましたね。
ジャズ・サイドの音楽家たちが、ローカルな音楽の音階や旋法を理解しようと意識を
変え始めたことが一番大きいんじゃないのかな。
ひと昔前までは、ローカルな音楽にないハーモニーを加えたり、
テンション・ノートやスケール・アウトする音使いで、
「ジャズぽい」演奏にしてしまう無神経さが横行したものですけれど、それも今や昔。
ここで聞かれるギターなんて、ジャズ・ミュージシャンとは思えないほど、
ジャズ・マナーをおくびにも出さないプレイをしています。

ザンジバルの伝説的なターラブ音楽家イサ・マトナを父に持つ
ムハンマド・イサ・マトナ・ハジ・パンドゥは、
父の楽団でパーカッション奏者として修業したのち、
18歳でカシ・ミュージカル・クラブに参加して一本立ちしたターラブ音楽家。

Ilyas Twinkling Stars.jpg   Ikhwani Safaa Musical Club  ZANZIBARA 1.jpg

20歳でムハンマド・イリアス&トゥインクリング・スターズに加わり、
91年に来日して日本でレコーディングしたCDでは、
ヴァイオリンとコーラスを務めていました。
その後、名門楽団のイクワニ・サファー・ミュージカル・クラブに移り、
『100周年』記念アルバムでも、マトナの名をみつけることができます。

本作のレパートリーでは、ターラブを大衆化させた
伝説の女性歌手シティ・ビンティ・サアドの4曲に、
アラブ歌謡の巨匠ムハンマド・アブドゥル・ワハーブの2曲を
取り上げているのが注目されます。
モダンな音楽性を志向する一方、ターラブの古典やザンジバルやエジプトの古謡を
多く取り上げた温故知新の姿勢が、本作を成功させた秘訣といえそうです。

Matona’s Afdhal Group "MATONA’S AFDHAL GROUP" OK World 377 908 7 (2018)
イリアスのきらめく星 「ザ・ミュージック・オブ・ザンジバル」 セブンシーズ/キング KICP203 (1992)
Ikhwani Safaa Musical Club "ZANZIBARA 1: 1905-2005 CENT ANS DE TAARAB À ZANZIBAR" Buda Musique 860118 (2005)
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