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キクユのポエトリー・ダンス・ミュージック ムウォンボコ [東アフリカ]

H.M. Kariuki & Mr. Wa Gakuya.jpg

ケニヤのキクユ人の古いポピュラー音楽を聞くことができる、貴重なCDを見つけました。
うち1枚は、ケニヤがまだイギリスの植民地だった1930年代に生まれた、
キクユ人のダンス音楽ムウォンボコを演奏したアルバムで、タイトルもそのものずばり。

ムウォンボコを代表するアコーディオン奏者であり、
キクユのポピュラー音楽のパイオニアでもあるH・M・カリウキと、
カリンガリンガという鉄製リングを鉄棒で叩く打楽器を奏する
相棒ワ・ガクヤのコンビによるムウォンボゴを、たっぷり13曲聴くことができます。

表紙に「1940」と大書きされているのは、
40年代当時そのままのサウンドを再現していることをアピールしているようです。
ムウォンボコ誕生のきっかけは、キクユ人の伝統的なダンス音楽のムシリグが
30年代初頭に植民地政府に禁止されたからでした。

20年代後半、反政府的な歌詞を歌いながらムシリグをダンスするのが、
キクユのコミュニティで流行となり、その抗議的なメッセージが
政治運動化するのを、植民地政府は怖れたのですね。
当時を振り返ると、21年に政治団体のキクユ青年協会(YKA)が設立され、
その後24年に政治活動を禁止されるも、その後キクユ中央協会が設立されるなど、
イギリスへの抵抗運動が萌芽しはじめた時代だったのです。

そしてムシリグを禁止されたキクユ人たちが、
代わりに考案した新しいダンスのムウォンボコは、
スコティッシュ・ダンス、ワルツ、フォックス・トロットの影響を受けたペア・ダンスで、
再び禁止とならないための狡猾なアイディアによって、生まれました。
カップルが手を取ってリズムに合わせて揺れ、
ゆっくりと円を描くようなステップを踏むムウォンボコは、
植民者の主人であるイギリス人の目にも、魅力的に映りました。

踊り手が列をなして、身をかがめて前後にコミカルなステップを踏むダンスは、
まったくアフリカ的ではない、ヨーロッパ的なダンスなのですが、
キクユの若者たちにも、男女が手を接触する新鮮さでウケたんですね。

こうしたスコティッシュ・ダンス、ワルツ、フォックス・トロットは、
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間にナイロビに駐屯した
空母部隊の兵士たちから習ったもので、アコーディオンという楽器も、
第一次世界大戦や第二世界大戦でイギリス軍に従軍したアフリカ兵たちが、
戦地から持ち帰ったものでした。

H・M・カリウキのムウォンボコを聴くと、際立った特徴があり、
アコーディオンが歌の伴奏をするというより、
アコーディオンがメロディをひとしきり弾いた後、ポエトリー・リーディングするという
形式の曲が多く、メロディは女性コーラスが歌う形式の曲も聞かれます。
語りに特徴を置いたこのスタイルは、ムシリグを継いだものなんでしょうね。

ベースとドラムスに、ミックスが悪くてほとんど聞こえない
エレクトリック・ギターが加わったバンド・サウンドの曲が1曲、
‘Njohi Ti Ngoma’ で聞けます。こういうエレクトリック・バンド化したムウォンボコを、
もう少し聞いてみたかったなあ。

H.M. Kariuki & Mr. Wa Gakuya "MWOMBOKO" Simba Music, Inc. 007SMI
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