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世界に知られるべきギネア=ビサウの才媛 カリナ・ゴメス [西アフリカ]

Karyna Gomes.jpg

わぁ、やっと見つかりました。
ギネア=ビサウの新進女性シンガー・ソングライター、カリナ・ゴメスのデビュー作。
エネイダ・マルタの新作でカリナの曲が起用され、その時にちょっと話題にした人です。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

カリナ・ゴメスはギネア=ビサウ独立2年後の76年、
ギネア=ビサウ人の父とカーボ・ヴェルデ人の母のもと、ビサウに生まれました。
ビサウには大学がなく、大学教育を受けるため、奨学金を得てブラジルへと渡ったんですね。
ブラジルで5年間滞在する間に、サン・パウロの教会でクワイアに参加したことが、
音楽の道に足を踏み入れるきっかけとなったそうです。

大学ではジャーナリズムを学び、学位取得後、07年にギネア=ビサウへ帰国すると、
AP通信の特派員、ラジオ局員、ユニセフの報道官などを経験したとのこと。
その一方、レストランで歌うなど、音楽活動も並行していたようで、
ギネア=ビサウの歴史的な名門バンド、スーパー・ママ・ジョンボの元バンドリーダー、
アドリアーノ・ゴメス・フェレイラに誘われて
スーパー・ママ・ジョンボに加入したのを機に、本格的なプロ活動に転じたようです。

そして、14年にリスボンでレコーディングしたデビュー作が本作。
冒頭、サルサ・タッチのアレンジの‘Baluris Torkiadu’ から、ウナりましたよ。
イナセなアコーディオンをフィーチャーした生演奏主体のプロダクションにのせた、
カリナの柔らかく穏やかな歌いぶりが、もう絶妙。
ウチコミを排したプロダクションはデリケイトの極致で、
この演奏のアーバンな洗練度合いは、リシャール・ボナ級でしょう。

3曲目のグンベーなんて、現代アフロ・ポップ最高のクオリティじゃないですか。
プロデュース、アレンジは、鍵盤奏者のパウロ・ボルジェス。
ギネア=ビサウの才人マネーカス・コスタもギター、ベースで参加しています。
極上のハワイ音楽を聴いているかのような‘Mindjer I Mamê’ や、
コラの美しい音色を生かした‘Mindjer di Balur’ など、珠玉の仕上がりと言いたいですね。
デビュー当初のロキア・トラオレを思わす知性と、
アフリカ新世代のみずみずしさをあわせ持った才能が生み出す、
インティメイトな親しみある音楽の質感に、感じ入りました。

前半はカリナの自作曲が続きますが、中盤から名門バンド、
スーパー・ママ・ジョンボのオリジナル・メンバーのゼー・マネール・フォルテスの曲や、
カリナを見出したアドリアーノ・ゴメス・フェレイラの曲に、
70年代のギネア=ビサウを代表するバンド、コビアナ・ジャズの創立者
ジョゼー・カルロス・シュヴァルツの曲が登場します。
それらの曲のなかには、詩人のエミリオ・リマや、
コビアナ・ジャズのメンバー、エルネスト・ダボーがゲスト参加しています。

終盤の聴きどころは、
ギネア=ビサウの伝統的なマンジュアンダディを歌った‘Nha Cunhada’。
マンジュアンダディはギネア=ビサウの女性たちが伝承してきた音楽で、
女性たちによる伝統的な互助グループを指す名前でもあります。

ギネア=ビサウのポピュラー音楽第一世代から引き継いだ音楽性と
レパートリーを活用しながら、ギネア=ビサウ女性のアイデンティティを発揮しつつ、
現代的な感性を生かした本作、デビュー作にして見事な傑作です。

惜しむらくというより、遺憾千万なのは、
インターナショナルなマーケットにまったく流通していないこと。
ゲット!レコーズのカタログには、
グローバルに知られるべき素晴らしい作品が並んでいるのに、
これが知られずに埋もれているのは、腹立たしい限りです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-01-29
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-01-18

Karyna Gomes "MINDJER" Get!Records GET00002/14 (2014)
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