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ヴィブラフォンとバラフォン両刀使いの新人デビュー作 シモン・ムリエ [西・中央ヨーロッパ]

Simon Moullier  SPIRIT SONG.jpg

なんだか最近、ヴィブラフォンがきてる?
ヴィブラフォン奏者のリーダー作が目立つように思うんですけれど。
これまでにここでも、ステフォン・ハリスやユハン・スーのアルバムを取り上げてきたし、
巷ではジョエル・ロスが大ブレイク中。

そのジョエル・ロスの新作と一緒に買ってきた、ブルックリンを拠点に活躍する
フランス人ヴィブラフォン奏者シモン・ムリエのデビュー作に、
すっかりハマってしまいました。
おかげでジョエル・ロスの新作の方は、すっかり影が薄くなってしまって、
やっぱりこの人は、ぼく向きじゃないみたいだなあ。
今作も昨年のデビュー作同様、あまりにスムースすぎて、スリルがなさすぎ。
なんだって、こんなにめちゃくちゃ複雑な構成の楽曲や、変拍子使いを、
これほどなめらかに演奏しちゃうのかなあ。ファンは、そこがいいんだろうけど。

というわけで、作曲とアンサンブルの才のジョエル・ロスより、
インプロの魅力に富むシモン・ムリエの方が、ぼく好みになるわけなんですが、
プレイの方もジョエル・ロスとは好対照。
豊かなハーモニーを生み出すジョエル・ロスと違って、
この人はシングル・ノートを中心に、打楽器的なアプローチで演奏する人で、
ハーモニーはピアノに任せています。

もうひとつ、ぼく好みなのは、バラフォンもプレイしているところ。
ヴィブラフォンの演奏とはアプローチを変え、アフリカ音楽をきちんと参照して
バラフォンを多重演奏しているトラックなど、好感が持てます。
バラフォンをマリンバみたいに演奏してしまうジャズ・プレイヤーもいるなかで、
シモンはどこでバラフォンを覚えたんだろう?

この人のサイトをのぞいてみると、フランスでクラシックの打楽器を学び、
その後バークリーで学士号を取り、
セロニアス・モンク・インスティテュート・オヴ・ジャズで修士号を取得とありました。
シモンの打楽器的なアプローチは、クラシックからスタートしてるんですね。

デビュー作は、17年と20年に行われたセッションを中心に収録されていて、
リズム・セクションは両セッション共通、サックスとピアノが交替しています。
シモンはシンセサイザーも演奏し、スペイシーなサウンドを打ち出しながら、
ヴィブラフォンの豊かなパッセージで紡ぐ、メロディックなラインが魅力的です。
ヴィブラフォンを叩きながら、うなり声をあげているところも、
脳内のメロディを変換して演奏する、最近では珍しい、
昔ながらのジャズ気質を持つ人みたいですね。

Simon Moullier "SPIRIT SONG" Outside In Music no number (2020)
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