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2020年代のブラック・ミュージック絵巻 ジョン・バティステ [北アメリカ]

Jon Batiste  WE ARE.jpg

R&Bシンガーの新人?と店頭でなにげなく試聴して、衝撃が走りました。
すぐさまレジへ直行し、家であらためてじっくり聴いて、その才能にたまげましたねー。
ゴスペル、R&B、ニュー・オーリンズ・ソウル、ヒップ・ホップを横断して、
クオリティの高いエンターテインメント作品に仕上げる一方、
ブラック・ライヴズ・マターのメッセージを、くっきりと刻印しているじゃないですか。
スケールのデカいサウンドにも驚かされましたけれど、歌に込められた心意気が、
めちゃ前向きというか、ポジティヴで、胸を打たれました。

ブラック・ライヴズ・マターというと、どうしても怒りのエネルギーが先立ちますけれど、
ここには、どんなに痛めつけられようと、不屈の闘志で立ち上がってきた、
ブラック・ピープルの度量の大きさが示されています。
並外れた苦闘の歴史を経た、彼らの逞しさを仰ぎ見るような気持ちで、
ぼくはこのアルバムを聴き終えました。
見開きジャケットの内側に、びっしりとライナーノーツを書いているのが、
クインシー・ジョーンズというのも、このアルバムにふさわしいじゃないですか。

いったい、どういう人なんだ、この人と、あわててバイオを調べてみれば、
新人歌手などではなく、ニュー・オーリンズの音楽一家に育ったジャズ・ピアニストだそう。
テレビ番組の音楽監督から、ディズニー&ピクサー映画の音楽担当も務めるなど、
多方面に活躍している、いま旬の音楽家だということを知りました。

どおりで、見事なプロダクションができるわけです。
マーチング・バンドや子供のゴスペル隊をフィーチャーしたり、
ロバート・ランドルフやトロンボーン・ショーティを、
それぞれがもっとも輝く場面で使ってみたり、
ピアノ、ベース、ドラムス、ギター、サックスをジョン自身で多重録音もすれば、
ジェイムズ・ギャドソン、スティーヴ・ジョーダン、ネイト・スミスという名ドラマーを
使い分けるなど、さまざまなゲストの起用が、憎たらしいくらいツボにハマっています。

The Jonathan Batiste Trio.jpg

出身がジャズ・ピアニストと知って、あれ? そういえば、
似た名前のジャズ・ピアニストがいたよなあと、思い出しました。
早速CD棚をゴソゴソ探してみたら、ありましたよ、ジョナサン・バティステ。
なんだ、これって、同一人物じゃん!

そうだったのかぁ、よく覚えてますよ。
だいぶ昔に買った自主制作盤なんですけれど、
オープニングからいきなりストライド・ピアノを弾いていて、
そのユニークさに魅かれたんでした。
ストライド・ピアノといっても、クラシック・ピアノのスキルを
うかがわせる研ぎ澄まされたタッチが、
いにしえのハーレム・スタイルとは異なるムードを生み出していて、
すごく現代的で、新鮮だったんですよね。
ちなみに今調べたら、このCD、11年に日本盤も出ていたんですね。
当時20歳の時の録音で、これがデビュー作だったようです。

この1枚を愛聴したものの、その後の彼の活動は知らないままでしたが、
ジャズ・ピアニストという枠を大きく超えた、総合音楽家に成長していたのかぁ。
ブラック・ミュージックの伝統をふまえつつ、ジャズやR&Bの垣根を越えてたどり着いた、
ソウル・ミュージックの現在地点を示して見せた作品。
ニュー・オーリンズを背景とした、
2020年代のブラック・ミュージック絵巻というべき傑作です。

Jon Batiste "WE ARE" Verve B0033358-02 (2021)
The Jonathan Batiste Trio "LIVE IN NEW YORK: AT THE RUBIN MUSEUM OF ART" no label no number (2006)

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