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ウルトラ・モダンなアラブ歌謡 アビル・ネフメ&マルセル・ハリーフェ [中東・マグレブ]

Aber Nehme & Marcel Khalife.jpg

ジュリア・ブトロスにヒバ・タワジと、正調アラブ歌謡の復権が著しいレバノンから、
またもゴージャスなアルバムの登場です。
ジャケットに、親子ほど年の離れた男女が写っていますが、
女性は80年生まれの歌手、アビル・ネフメ、
男性は50年生まれの作曲家、マルセル・ハリーフェ。

マルセル・ハリーフェは、本作でアラブの著名な詩人の詩に曲を付けていて、
レバノンのジョゼフ・ハルブ、ハビーブ・ユネス、バーレンのカシム・ハダード、
パレスチナのマフムード・ダルウィーシュ、さらにエジプト大衆音楽の祖、
サイード・ダルウィーシュの詩にも曲を付けています。

アビル・ネフメは、古典声楽から現代のオペラまで幅広いレパートリーをこなす声楽家で、
レパートリーにラハバーニ兄弟の作品やレバノンの伝統音楽のほか、
シリア正教会、マロン派教会の聖歌、ビザンティン聖歌も歌います。
06年のバールベック国際音楽祭では、ラハバーニ兄弟作のオペラに出演し、
フェイルーズとも共演しています。

まさしくそのフェイルーズをホウフツとさせる、
アラブ的な哀愁に満ちた旋律と西洋的な楽曲にのせて、
交響楽団を伴奏に歌っていて、黄金時代のフェイルーズが二重写しになります。

アビルの声質は、温かみのある中音域がベースにあって、
そこに可憐さをにじませる高音域と、ドスを利かせた低音域も時に織り交ぜながら、
細やかなコブシも駆使して歌っています。
裏声を利かせたダイナミックな歌唱を披露するパートでも、
大向こうなハッタリといった印象を与えない歌いぶりに、真摯さが滲みます。
派手さのない滋味な味わいは、ヒバ・タワジと対極の個性といえるかもしれません。

曲により、交響楽団ではなく、マルセル・ハリーフェが弾くウードを中心とする
小編成の弦楽アンサンブルを伴奏の曲もあり、楽曲のバラエティの豊かさも魅力。
全14曲70分、荘厳なドラマを見るかのような大力作です。

Abeer Nehme & Marcel Khalife "SING A LITTLE" Nagam/Universal NR1022 (2018)
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