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熱帯性雑食音楽の魅力 スム・アルヴァリーニョ [中部アフリカ]

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サントメ・プリンシペの70~80年代録音をコンパイルしたボンゴ・ジョー盤で、
スム・アルヴァリーニョという歌手を初めて知りました。
調べてみたところ、選曲された2曲を含む82年のレコードがCD化されていることがわかり、
さっそく入手してみたところ、これがすごく面白い。

サントメ・プリンシペのポップスというと、
アフリカ・ネグラやサンガズーザなどの代表的なバンドから、
ペドロ・リマのような人気歌手まで、みんなルンバ・コンゴレーズの影響が強く、
独自性のある音楽が聞こえてこないんですけれど、この人は違いました。

リズムを刻むスクレイパーが、アンゴラのセンバのディカンザみたいに聞こえる曲や、
前半がバラードで、後半がハイチのコンパのようなリズムにスイッチする曲、
はたまたパーカッション・アンサンブルをバックに、
コール・アンド・レスポンスの歌でスタートするも、
途中から泣きのラメントに変わったりと、
とにかく全曲、ポルトガル語圏アフリカやカリブの音楽が
さまざまにミクスチャーされていて、リズムもムードもどれも違うという面白さ。

なかでも、アンゴラ音楽の影響を一番強く感じさせるものの、
小瓶などの小物打楽器のアクセントはセンバとは違って、
いにしえのルンバ・コンゴレーズ調だったりと、とにかく謎だらけ。

ボンゴ・ジョー盤の解説で、サントメ・プリンシペには、
アンゴラのレビータとサントメ・プリンシペのリズムを
ミックスしたプシャという音楽があることを知りましたが、
そのプシャを演奏しているコンジュント・ミンデーロを聞いても、
いまひとつそのプシャなる実体が、よくわからないんですよねえ。

ポルトガル語アフリカ圏には、
カーボ・ヴェルデのフナナーやアンゴラのレビータやセンバなど、
ドミニカのメレンゲと親和性の高いリズムが昔からありました。
じっさい70年代のカーボ・ヴェルデやアンゴラでは、
メレンゲが人気だったわけですけれど、
関係の深いアフリカ諸国の音楽や、カリブ、ブラジルの音楽などが、
多様に混淆して生み出された痕跡が、
このスム・アルヴァリーニョのアルバムから聞こえてきます。

グルーヴィなオルガンが活躍する曲や、
同時代のシンセ・ポップとはまるで違う、独特のシンセの使い方をしている曲など、
いろいろな表情を持つ曲がひしめいています。
共通するのは、どの曲もビートがまろやかで、スウィンギーなところかな。
この独特のセンスがサントメ・プリンシペ特有のものなのか、
スムの個性なのか判然としませんが、このユニークな音楽性は、
これまで聴いたサントメ・プリンシペのポップスのなかでも、抜きんでています。

Sum Alvarinho "CACAU" IEFE/Sonovox SONO11.293-2 (1982)
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