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トンブクトゥの女王を悼んで ハイラ・アルビー [西アフリカ]

Khaira Arby  NEW YORK LIVE.jpg

アフリカのアーティストで、ライヴを観たかった筆頭格が、ハイラ・アルビー。
ハイラをトンブクトゥのソウル・ディーバと礼賛した記事を、かつて書きましたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-09-21
18年4月に届いた訃報には、全身から力が抜ける思いがしたものです。
59という年齢で逝くなんて、あまりに早すぎますよ。

ハイラ・アルビーを世界に紹介したクレモント・ミュージックが、
生前のライヴ録音を出すという知らせを聞いていたので、
首を長くして待っていたんですが、ようやくこの春、
10年8月にニュー・ヨークのバード大学で行われたライヴ・アルバムがリリースされました。

10年というと、ちょうど世界デビュー盤の“TIMBUKTU TARAB” を出し、
ヨーロッパ、北米、モロッコ、アラブ首長国連邦を回っていた
世界ツアーのときの録音ですね。
“TIMBUKTU TARAB” 収録の6曲を含む10曲が、収録されています。

天に駆け上っていくようなハイラの素晴らしいヴォーカルに、圧倒されます。
生命力が漲るその歌声には、ホレボレとさせられますよね。
地元トンブクトゥの大スターから、マリを代表するシンガーとしての栄誉を勝ち得て、
世界に羽ばたいたキャリア絶頂の瞬間を捉えた、輝きに満ちたライヴ盤です。
ハイラをバックアップするバンド・サウンドも完璧な仕上がりで、まさに当意即妙。
「トンブクトゥのアリーサ・フランクリン」とも形容されたハイラですけれど、
このアルバムは、アリーサのフィルモア・ウェストのライヴ盤をホウフツとさせますね。

10年の録音といえば、奇しくも同じ年の1月、
バマコで録音されたザ・スウェイ・マシナリーのアルバムに、
ハイラ・アルビーが大々的にフィーチャーされていたんですけれど、
このアルバム、日本ではまったく知られていないようなので、
せっかくだからここで紹介しておきましょう。

The Sway Machinery  THE HOUSE OF FRIENDLY GHOSTS, VOL.1 FEATURING KHAIRA ARBY.jpg   The Sway Machinery & Khaira Arby.jpg

ザ・スウェイ・マシナリーは、
5人のジューイッシュをメンバーとするブルックリンのバンド。
ジョーダン・マクリーン(トランペット)とスチュアート・ボギー(テナー・サックス)
の二人は、アンティバラスのメンバーとしても知られています。
リーダーのジェレマイア・ロックウッド(ヴォーカル、ギター)は、
ユダヤ教会の典礼音楽を受け継ぐ一族の出身で、
ナイトクラブで演奏できるファンキーなユダヤ音楽をクリエイトしようと、
ザ・スウェイ・マシナリーを立ち上げたといいます。

そのザ・スウェイ・マシナリーが「砂漠のフェスティヴァル」に招聘され、
ハイラ・アルビーと出会って意気投合、バマコでセッションすることになったんですね。
ハイラとともに砂漠のフェスティヴァルに出演したシュペール・オンズや、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2014-02-26
ジェリマディ・トゥンカラ、ヴィユー・ファルカ・トゥーレ、ズマナ・テレタとの面々も、
セッションに参加しています。

砂漠への旅の途中で出会ったトゥアレグの男の子の歌や、女性たちのコーラス、
ラクダのいななき、街に流れるアザーンをフィールド録音したトラックなども織り交ぜ、
ザ・スウェイ・マシナリーがマリを旅した、
ロード・ムーヴィといったアルバムになっているんですね。
CDブック形式の80ページのフォト・ブックには、
マリで撮られた様々なスナップ・ショットとともに、
アメリカのジューイッシュがマリで出会った異文化体験を率直に書き記していて、
すがすがしさを覚えます。

その制作アプローチは、
デーモン・アルバーンの『マリ・ミュージック』とよく似ていながら、
デーモンの仕事を快く思わないぼくが感動できたのは、
異文化への敬意の熱量と、アティチュードの違いだろうな。

ライヴ盤でも歌われている‘Sourgou’‘Youba’ の2曲がこちらでも聴けるんですが、
ロウファイな魅力は、またひと味違う仕上がり。
シュペール・オンズも加わってタカンバの祝祭感溢れるヴァージョンに仕上げた‘Sourgou’、
バリトン・サックスのブルージーなリフとテナー・サックスのブロウに、
黄金時代のエチオピア歌謡を思わすド迫力の‘Youba’ と、
ライヴと甲乙つけがたいヴァージョンになっています。
ハイラ・アルビーのライヴ盤を契機に、
ザ・スウェイ・マシナリーのアルバムにも注目してもらいですねえ。

Khaira Arby "NEW YORK LIVE" Clermont Music CLE033
The Sway Machinery "THE HOUSE OF FRIENDLY GHOSTS, VOL.1 FEATURING KHAIRA ARBY" JDub JDUB124 (2010)
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