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抑制の美学 リア・サンパイ [南ヨーロッパ]

Lia Sampai  AMAGATALLS DE LLUM.jpg

カタルーニャのインディ・レーベル、ミクロスコピの作品が初入荷。
入荷した全タイトルをチェックして、アンテナにひっかかった2作品を買ってみました。
その1枚が、前回のジャズのアルバ・カレタ・グループだったんですけれど、
もう1枚は、女性シンガー・ソングライターのリア・サンパイ。

カタルーニャの女性シンガー・ソングライターといえば、
シルビア・ペレス・クルースが大人気ですけど、
実はぼく、彼女がまったくダメなんですよ。
現代っ子特有の発声や、自意識の強い歌いぶりが、超苦手。
そんなわけで、警戒しつつ聴いてみたんですが、このリア・サンパイは大丈夫でした。

気取りのない、抑制の利いた歌いぶりに、まず好感。
ひらひらと蝶のように舞う歌い回しが軽やかで、耳に心地良く響きます。
声高なシルビア・ペレス・クルースとは大違い、なぞといらん憎まれ口を叩いたりして。
繊細だけど力強さのある、豊かで深みのある歌唱を聞かせます。

そして、リアのパートナーであるアドリア・パジェスのギター伴奏が素晴らしい。
クラシック・ギターの奏法がベースとなっているものの、
ナイロン弦の響きがどこまでも柔らかで、エッジの立った音は出てきません。
ハーモニクスを多用した奏法を聞かせたりと引き出しの多い人で、
フラメンコ的な表現が借用される場面でも、ギターのタッチはまろやかで、
パルマをゆったりとさせたような手拍子もおだやか。
エレクトリック・ギターを使った曲でも、そのギター・トーンは甘やかです。

アドリアのアレンジは、シンプルなギター伴奏の静謐なサウンドを保ちながら、
ヴァイオリンとチェロの弦セクションや、
ピアノやグロッケンシュピールを効果的に使って、
ぬくもりのある音楽世界を織り上げています。
抑制の美学を感じさせますねえ。

そんなリアの音楽をヴィジュアル化したジャケットも、すごく気に入っています。
ピクトリアリズム調のポートレイト写真は、気品がありますねえ。
視線を落としたリア・サンパイのうつろな表情が、またいいんだな。
スティーグリッツが撮ったオキーフみたいでさ。
画質は、メイプルソープが撮ったパティ・スミスみたいなシャープさ。
ファイン・アート・フォトグラフが好きな人なら、ほっとけないでしょう、これ。

Lia Sampai "AMAGATALLS DE LLUM" Microscopi MIC189 (2021)
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