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気品のあるラヴ・ソング集 ペク・イェリン [東アジア]

Yerin Baek  EVERY LETTER I SENT YOU..jpg

『アジア都市音楽ディスクガイド』、参考にさせてもらっています。
「お、シーラ・マジッドの“WARNA”がちゃんと選ばれてる」とか、
「おい、おい、ルース・サハナヤの“...UTHE!”をセレクトしないのかよ」などと、
一人ツッコミしながら楽しませてもらいましたが、
なんといっても未知のアルバムで、自分好みのものを発見するのが、最大の眼目。
00年代以降なんて、見たこともないアルバムが、ずらっと並んでいるんだからねえ。
図書館の返却期限までにウォント・リストを作って、
オンライン・ショップでCD探しにいそしみました。

で、真っ先に手に入れたのが、韓国の女性シンガーの本作。
化粧箱入りの布張ハードカヴァー写真集という豪華さに、びっくりしました。
歌詞入りの92ページの写真集には、ポストカードも入っていて、
CD2枚が封入されています。収録時間的には1枚で十分なはずなんですが。
この装丁でフツーのCD1枚分のお値段というのは、格安じゃないですかね。

前回の台湾の藍婷(ラン・ティン)に引き続いて、
CD本体より外身に圧倒されてしまいましたが、こちらもインディ制作ですね。
シックな大人の女性像をイメージする歌声で、ネオ・ソウルやアンビエントR&Bを
バックグラウンドとしたサウンド・プロダクションにのせて、クールに歌っています。
ペク・イェリンの実年齢が22と知って、驚きました。
落ち着きのある成熟した歌声は、とてもそんな若さとは思えなかったものだから。

なんでもK-POP大手の事務所に所属して、
メジャーな世界で活躍していた人なんだそうですが、なかなか思い通りの活動ができず、
インディに移籍してリリースしたのが本作だとのこと。

ひけらかすような歌いぶりはみせないものの、しっかりとした歌唱力がうかがえ、
ディスク2の終盤で1曲だけ(‘Square’)、歌唱力を爆発させて、
ホイットニー・ヒューストンばりのダイナミックな唱法で、実力を発揮しています。
また1曲をのぞき、全曲英語で歌っているというのも、珍しいんじゃないですかね。
K-POP事情に明るくないので、よくわかりませんが。

ゆっくりと流れゆく雲を見つめながら、
ただ時が過ぎていくのに身をまかせながらたたずむ、
孤独な心を映した心象風景のような曲が並びます。
傷つきやすい臆病な心を隠すかのような、ひそやかなメロディは、
メロウなビートにのせて、ほろ苦い余韻を残します。
ヒリヒリとした表現にならないラヴ・ソングが、とてもいとおしく、
恋心に揺れる不安定な感情が、静かに聴き手に伝わってきます。

これほど気品のあるラブ・ソング集は、なかなか出会えるもんじゃありません。
このデリカシーは、シャーデーの“LOVE DELUXE” に比肩しますよ。
聴けば聴くほどに、惹き込まれます。

こういう上質のアルバムは、インディだから作れるんでしょうね。
K-POPのようなビッグ・セールスには、つながらんだろうけど。
なんて勝手な感想を抱いていたら、
発売から3週間でアルバム・チャート1位になったんだとか。
スゴイな、韓国。

Yerin Baek “EVERY LETTER I SENT YOU.” Blue Vinyl no number (2019)
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