ウソくささのないクリスマス・キャロル キム・テチョン [東アジア]
あまりにドイヒーなジャケットに、かえって興味をソソられて聞いてみたら、
これがめちゃめちゃ面白い。ハングルは読めませんが、
このアルバムがクリスマス・キャロルだっていうんだから、いやはや。
64回目の誕生日のクリスマスは、これで祝うとしましょう。
キム・テチョンは、釜山で活動するシンガー・ソングライター。
ギター一丁で、カントリー・スタイルを身上に歌っている人らしい。
13年に『家畜病院ブルース』というタイトルのデビュー作を出し、
翌年に出した6曲入りのミニ・アルバムが、このEPなんだそう。
インディ作と思いきや、なんとワーナー・ミュージックから出ています。
歌詞カードにクレジットも載っているようなんですけど、
全部ハングルなので、歯が立ちません。
リッピングしたら、英訳の曲目が出てきて、1曲目から順に、
‘Christmas’ ‘Santa Won’t Knock At Your Window’ ‘Jesus’ ‘Deer Rudolph’
‘Silent Night’ ‘Silent Night Holy Night’ とあるので、
クリスマス・アルバムなのは間違いないようですね。
オープニングから、快調なウェスタン・スウィングのリズムにのせて、
スティール・ギターが滑り出します。キム・テチョンのひと癖もふた癖もある、
人を食ったようなヴォーカルが、たまんねー。
ダン・ヒックス好きのぼくには、どハマリな歌い手さんです。
男女コーラスが、歌い手をまぜっかえすように合の手を入れるのも、
ホット・リックスを連想させられるなあ。
ダルいツー・ビートで歌われるタイトル曲の「サンタは窓を叩かない」は、
<愛と幸福に満ちたクリスマス>という虚飾に満ちたイメージを、
ひっぺがしてみせるようなトーンに満ちていますね。
ハッピーなふりをするクリスマスごっこにブーイングする作者の意図を感じます。
やるせないヴォーカルや、ご本人が吹いているとおぼしき
カズーのネクラなソロに、偽悪を演じる誠実さが伝わってきます。
こういう曲の後だからか、続く朗らかなカントリー調の2曲では、
フィドルのソロがある「ジーザス」、マンドリンも出てくる「ディア・ルドルフ」ともに、
ユーモラスな歌いぶりを素直に楽しめます。
オルガンをバックに歌うオリジナルの「サイレント・ナイト」は、賛美歌のよう。
でもおそらく歌詞には、この人の痛みが込められているんじゃないかな。知らんけど。
そして、ラストの「きよしこの夜」は、ハワイアンにアレンジして、
ウクレレとスティール・ギターを伴奏にハミングしてます。
最後まで人を食ったアルバムなんだけど、おふざけじゃないし、冗談めかしてもいない。
ましてやスノッブ臭など皆無で、ウソをつけない正直な人なんだろうな。
キム・テチョン、友だちになれそうです。
Kim Tae Chun “SANTA WON'T KNOCK AT YOUR WINDOW” Warner Music VDCD6513 (2014)
2022-12-25 00:00
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