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台湾インディのクリエイティヴィティ 薛詒丹 [東アジア]

薛詒丹 倒敘.jpg

昨年フル・アルバムが待ち遠しいと書いた、薛詒丹(ダン・シュエ)の待望の新作。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-08-31

年末のパーティから帰宅すると、自宅に届いていて、
ほろ酔い気分で聴き始めたら、もうトロけちゃいましたよ。
前作『太安靜』からグッと大人びた声になって、いやあ、いいオンナになったねえ。
耳の裏に甘い吐息をかけてくるようなダン・シュエの歌声に、
一聴でメロメロになりました。

短いイントロに続いて始まる「飯後點心」の、オーガニックな温かさに満ちた歌声。
たゆたうシンセの合間を、ピアノがレイヤーされ、
ダン・シュエの穏やかなヴォーカルと、
オーヴァーダブされた自身のバッキング・ヴォーカルが、
オーロラ・リフレクターのようなきらめきを放ちます。

続く「生存偏見」、ラッパーをゲストに迎えた「沙發危機」、
トランペットのリフとレイヤーされたシンセが夢見心地に誘う
「can i leave my dream」までの流れは、鮮やかというほかありません。
デリケイトに音を積み重ねた、一級品のジャジー・ソウルです。
ラグジュアリーなムードに酔えるのも、ダン・シュエの歌の魅力あってこそ。

短いギターのインタールードを挟んで、けだるく歌い始める「Summer Café」は、
やがてファニーなムードのユーモラスな温かさを帯びたメロディへと移っていき、
心がほっこりとしていくのを感じます。
エンディングでドラムスが倍テンポになるところも、シャレてますねえ。

終盤は、アクースティックなサウンドへとシフト。
ストリングスを配した「沒有月亮那天」では、細かくビートを刻むドラムスと、
ストリングスとシンセ・サウンドを絶妙にバランスさせたプロダクションに、
ムーンチャイルド以降の研ぎ澄まされたセンスを感じます。
そして、アクースティック・ピアノを主役に据えた
ラストのタイトル・トラック「倒敘」は、アンビエントをほのかに薫らせ、
余韻を残してアルバムを閉じる、クロージングにふさわしいトラック。

薛詒丹 倒敘 Pg.jpg

収録時間31分3秒という短さなれど、全10曲の密度の濃さはハンパない。
それはピンクのソフト・ビニール・パックに収められた、
凝りに凝った特殊パッケージも、またしかりです。
音楽家のみならず、エンジニア、デザイナー、フォトグラファーなど、
台湾インディに関わる制作スタッフのクリエイティヴィティ。
その総合力に圧倒されます。

薛詒丹「倒敘」火氣音樂 no number (2022)
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