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ユッスーの出発点 スター・バンド・ド・ダカール [西アフリカ]

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2010年のアフリカン・ポップスの復刻作を見渡してみると、
意義のあるリイシューが一番多く出たのは、セネガルだったように思います。
マニア好みのリイシューは数々あれど、
それがイコール、多くのファンに聴いてもらうべきアルバムとは限りませんからね。

ユッスー・ンドゥールのエトワール・ド・ダカールやスター・ナンバー・ワン・ド・ダカールは、
かつてリイシューされたCDが廃盤となって久しく、
新しいアフリカ音楽ファンにとっては、待望もしくはオドロキの新発見だったはず。
古手のファンにとっても、充実した解説やリマスターによる音質改善で、
既出CDとの曲のダブリを考えても、手に取らずにはおれませんでしたよね。

さて、そんなセネガルのポピュラー音楽黎明期を飾る、
代表的なバンドのリイシューが相次いだ年だったわけですが、
暮れにはさらに、スター・バンド・ド・ダカールとシュペール・ジャモノのリイシューが出て、
もう完璧にやられてしまいました。

なかでも手放しに嬉しかったのが、スター・バンドのリイシュー作。
かつてオランダのダカール・サウンドから出ていたスター・バンドの2枚のリイシューCDは、
60年代後半から70年代前半の、まだラテン音楽のコピーを脱していない時期のもので、
歴史的には貴重な録音とはいえ、正直あまり魅力のある演奏ではありませんでした。

スター・バンドがもっとも魅力的だったのは、75年以降のバンド末期の時代。
ヴェテラン・ミュージシャンたちがオーナーのイブラヒマ・カッセに反旗を翻し、
74年(諸説あり)に大量脱退したあと、
弱冠15歳(*)のユッスー・ンドゥールが加入してからがもっとも音楽的に輝いた時代です。
(*これまでスター・バンド加入時は16歳と、ユッスー本人も言っていたと思いますが、
本CDの解説には「16歳の誕生日を祝う前」という記述があります。本当ですかね?)

今回の編集盤は、まさにその時期の4枚のアルバムから選曲していて、
4作全曲を2CDでコンプリートCD化してくれたら、もう言うことなしでしたけど、
この時代の録音をきちんとリイシューしてくれただけで、もうズイキの涙もんです。

いずれのアルバムでも、4~6人のシンガーがフロントに立てられていますが、
ユッスーの声はすぐにそれとわかるくらい、ハイ・トーンのヴォーカルが抜きん出ています。
天才シンガーの出発点ともいえるもっとも初期の録音には、
<若い>というより<幼さ>さえ感じさせる歌いぶりが記録されていて、
その後の飛躍が保証付きのヤンチャなエネルギーの放出ぶりが、まばゆいほど。

この時期のスター・バンドは、
ラテン音楽にウォロフやマンディングなどの伝統音楽の要素を加え始め、
ンバラ誕生前夜ともいえる、魅力的な音楽性を聞かせていました。
のちにユッスーと共に活動する、
タマ奏者アッサヌ・チャムのプレイが聴けるのも、耳を引かれます。

ユッスーのファンはもちろんのこと、広くアフリカ音楽ファンにおすすめできる
アフリカン・ポップスの名アーカイヴ集です。

Star Band De Dakar "STAR 70s" Bellot/Cantos 079.A007.020
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