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カビールのレナード・コーエン アイト・メンゲレット [中東・マグレブ]

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アイト・メンゲレットのアルバムって、どれを聴いてもおんなじ。
フォークぽいギターの弾き語りが苦手ってこともあるんですけど、
この人の曲って、単調なフレーズの繰り返しでできているものが多くて、
歌詞がわからない人間には、正直退屈してしまいます。

アルジェリアのカビール歌謡に興味があるとはいえ、
アイト・メンゲレットやイディールあたりのフォーク系アーティストは、
アルバム2・3枚持ってれば十分という感じで、
評判の良い新作にもなかなか手を伸ばせずにいました。

しかしある所で聴かせてもらったら、
アイト・メンゲレットにしては珍しくフォーキーな内容ではなく、
伴奏陣が華やかなアルバムなんですね。
息子のジャファールがアレンジを務めていて、
ウード、マンドーラ、バンジョー、ヴァイオリン、カーヌーン、ネイのほか打楽器も交え、
アイト・メンゲレットの歌を守り立てています。

アイト・メンゲレットの曲はあいかわらずシンプルなものなんですけど、
控え目な男性コーラスやシンセなども効果的に使い、
なかなか手の込んだプロダクションとなっていて、
単調にならないあの手この手が仕掛けられています。

なんでも本作では、ボブ・ディランの曲を歌いたくてディラン側と交渉したそうですが、
許諾を得られなかったとのこと。
取り上げたかったディランの曲がなんだったのか、ちょっと興味あるところですが、
ディランなんかカヴァーしなくても、どうせカヴァーするなら、
もっとふさわしい人がアイト・メンゲレットにはいるようにも思いますけどね。

70年代のキリッとした歌いぶりから比べると、ずいぶん歌い口が温和となり、
慈愛にあふれた優しさを感じさせます。
アイト・メンゲレットが歌うカビール語の歌詞を解することはできないので、
音楽的な変化しか捉えられませんけれど、
その意味ではカビールのボブ・ディランと例えるより、レナード・コーエンという感がありますね。

Aït Menguellet "TAWRIQT TACEBHANT" Rue Stendhal CD20101 (2010)
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