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超絶ストレンジなシャーデー・カヴァー・アルバム ザ・レヴェリーズ [北アメリカ]

The Reveries  THE MUSIC OF SADE.jpg

3年前に偶然知った、カナダのライアン・ドライヴァー。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-08-13
そのユニークな音楽性に惹きつけられていたものの、
どういう人なのかよくわからないままでいたところ、
トロントのインディ・シーンを取り上げた「ミュージック・マガジン」の4月号の特集で、
ライアン・ドライヴァーとその周辺について、ようやく知識を得ることができました。

特集記事の推薦CD19枚の中には、
件のライアン・ドライヴァー・クインテットの
“PLAYS THE STEPHEN PARKINSON SONGBOOK” も選盤されています。
ほかにはどんなアルバムがあるのかなと、いろいろチェックしてみたところ、
引っかかったのが、ライアン・ドライヴァーがメンバーとなっているユニット、
ザ・レヴェリーズの本作。

ザ・レヴェリーズは、カヴァー・プロジェクトを目的とするユニットで、
メンバーはライアン・ドライヴァーに、
シンガー・ソングライターでギタリストのエリック・シュノー、
前衛ジャズのマルチ・プレイヤー、ダグ・ティエリ、ドラマーのジーン・マーティンの4人。
07年にウィリー・ネルソンをカヴァーした1作目を出し、
続いて出した2作目が、12年リリースのシャーデー・カヴァー集なんですが……。

とんでもないね、このカヴァー・アルバム。
ベロベロに酔っ払ったおっさんが、シャーデーの曲を鼻歌で歌ってるみたいな素っ頓狂さ。
聴いてると、ニヤニヤ笑いが止まらず、思わず吹き出したりの連続。
CD聴きながら、こんなに笑ったのって、後にも先にもこれが初めてじゃないかな。

ぶつぶつとつぶやくように歌うさまは、泥酔状態を通り越して、
昏睡一歩手前のアブナさも、ぷんぷんと匂ってくるようじゃないですか。
オープニングの“No Ordinary Love” からラストの“Kiss Of Life” まで、
そんな調子でタガが緩みまくった、うわごとのような歌が続き、
バックでは、エフェクトがノイズをまき散らしたり、
マウス・スピーカーで奇声を出したりと、
いやあ、こんなストレンジな音楽聴いたことない!

前衛音楽というと、難解なもの、怖いもの、意味不明なもの、自意識過剰なもの
というイメージがつきまといますけど、そのいずれからも遠いことに、心底感心しました。
無意識過剰とも思える、よじれまくった歌いぶりや、
スカスカのアンサンブルの脱力ぶりは、
アウトサイダー・アートをホウフツさせるじゃないですか。
気取りがなく、ほのぼのとしていて、気安い親しみに溢れながら、
どこか不穏なほの暗さが、通奏低音のように流れるアヴァンなフォーク・ジャズ。

「ヤバい」というボキャブラリーが、これほど似合うアルバムもありません。
“LOVE DELUXE” を生涯の愛聴盤とするシャーデー・ファンのぼくも、
脱帽もののカヴァー・アルバムです。

The Reveries "MATCHMAKERS VOLUME 2 : THE MUSIC OF SADE" Barnyard BR0327 (2012)
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