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正調アラブ歌謡の神星 ヒバ・タワジ [中東・マグレブ]

Hiba Tawaji  30.jpg   Hiba Tawaji  LIVE IN BYBLOS.jpg

ジュリア・ブトロスと一緒に、ヒバ・タワジの新作も入ってきましたよ。
ひとつ前の旧作で、DVD付の2枚組ライヴ盤も同時入荷という、
これまたジュリア・ブトロスとまったく同じなんだから、奇遇じゃありませんか。

いやあ、それにしても、ヒバ・タワジの前作“YA HABIBI” は評判になりましたねえ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-11-29
「ミュージック・マガジン」誌で、2015年ワールド・ミュージック部門の
ベスト・アルバム7位に選ばれたし、
ぼくの記事から1年半もかかったとはいえ、
『ヤ・ハビビ~ベイルートの若き宝石』のタイトルで、日本盤も出ましたからね。

ぼくがこれは素晴らしい作品だと思って、ここでいくら力説したとて、輸入もされず、
ましてや日本盤などリリースされることなどないアルバムがほとんどなので、
ヒバ・タワジが評価されたのは、本当に嬉しかったですよ。

さて、そのレバノン期待の若手女性シンガー、ヒバ・タワジの新作であります。
タイトルは、30歳を迎えたことを記念したもので、あわせて、
2枚のディスクに計30曲を収録したことも、ひっかけているんですね。

ジュリアの伴奏がプラハ市交響楽団ならば、
ヒバの方は、前作同様、ウクライナ国立管弦楽団とレバノン管弦楽団という布陣。
プロデュースも、これまた前作同様ウサマ・ラハバーニなのだから、
聴く前から保証付き!てなものですが、期待にたがわず、大力作に仕上がっています。

ウサマ・ラハバーニが作曲したミュージカルの歌曲を中心に歌っていますが、
前作のようなオペレッタ風の作品ではなく、
ディズニーの曲や、R&Bやフラメンコなどのテイストを加えた現代性も加味する一方、
サイード・ダルウィッシュの曲を取り上げるなど、アラブ古典にも目配りしています。
プロダクションは絶品というほかない、言葉を失う素晴らしさです。

現在のアラブ世界で、これ以上ない絢爛豪華な伴奏にのせて、
ヒバも見事な歌唱力で、それに応えています。
前作のイキオイ先行な熱唱ぶりも、だいぶ抑えられるようになりましたね。
ディスク2の4曲目“Bkhatrak” では、たおやかな歌いぶりを聞かせるなど、
前作にはなかった軽みもみせてくれていますよ。

ライヴ盤では、ロック・スターばりのカッコつけまくった登場で、
前に観たばかりの、微動だに歌うジュリア・ブトロスとは大違い。
ダンサーも従えて、ポップ・スターらしく振舞っています。
衣装替えのあとは、前作のレパートリーを中心に、
正調アラブ歌謡ど真ん中といったドラマティックなバラードを歌います。

ムハンマド・アブドゥル・ワハーブの曲では、
ウム・クルスームが歌う古いフィルムを投影するという演出をみせるかと思えば、
一転、ビヨンセの“Crazy In Love” もカヴァーしたりして。
アンコールでは、強力な歌唱力をどうだ!といわんばかりの歌いぶりで、
ああ、まだ若いんだなあと感じますけど、若くて実力のあるシンガーは、
こういう過剰なところを一度経ないと、円熟できないんだろうなあ。

ホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリーが出てきたころを思わせる
ヒバ・タワジは、アラブ世界だけでなく、西洋のリスナーにもアピールする大器です。
今後さらにスケールの大きな歌手となっていく予感がありますよ。

Hiba Tawaji "30" Oussama Rahbani Productions no number (2017)
[CD+DVD] Hiba Tawaji "LIVE IN BYBLOS" Oussama Rahbani Productions no number (2015)
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