SSブログ

アフリカン・スタイリッシュなクールネス ジェドゥ=ブレイ・アンボリー [西アフリカ]

Gyedu Blay Ambolley  KETAN.jpg

ファンキー・ハイライフのヴェテラン、ジェドゥ=ブレイ・アンボリーの新作。
12年の“SEKUNDE” 以来、5年ぶりのアルバムですね。
前作が出たのと時同じくして、ジェドゥのデビュー作で、
ファンキー・ハイライフの代表的な名盤“SIMIGWA” もCD化されたんだけど、
覚えてる人、どれくらいいるかなあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-04-18

あの時、ジェドゥ再評価のまたとないチャンスだと思って、
“SEKUNDE” のレヴューをミュージック・マガジンに書いたんですけど、
まったく話題にもならず、CDもほとんど日本に入らなかったしねえ。
もちろん日本盤なんて、出ずじまい(しおしお)。

というわけで、今回の新作は日本盤が出ると聞いて、嬉しかったですよ。
エボ・テイラーやパット・トーマスの活躍によって、
やっとジェドゥにも注目されるようになったんですね。

ストラットによって再評価されたエボやパットと違い、
西洋人が制作に関わっていないジェドゥのアルバムは、
前作同様、ガーナ録音、ジェドゥ自身による作編曲・プロデュースです。
前作はオランダのレーベルでしたけれど、今回はドイツのレーベルからのリリース。
ミックスに、前作オランダのレーベルのスタジオを使っているので、
両レーベルは関係があるのかも。

西洋人絡みの制作でないゆえ、インターナショナル向けの余計な装飾がなくて、
好感持てますよ。クレジットを見ると、ミュージシャンは全員ガーナ人のようですけど、
演奏力は高く、これなら西洋人の手を借りる必要なんて、まったくないですね。
たまたま一緒に聴いていたウム・サンガレの新作が、
西洋人向けのアンビエントな音響を装飾しまくっていて、まあジャマくさいというか。
余計な音響を、脳内リミックスで引き算しながら聴いてたんですけど、
ジェドゥの本作を聴いたら、そんなメンドくさいことしなきゃならないアルバムなんか、
わざわざ聴く必要ないじゃんという気分になっちゃいました。

で、このジェドゥの新作。
ファンキー・ハイライフの人なんですが、前作同様、アフロビート色が強いです。
オープニングの“Afrika Yie”、8曲目の“I Don't Know Why”、
ラストの“I Get Myself To Blame” なんて、まんまアフロビート。
ほかのアフロ・ファンクなトラックでも、アフロビートなニュアンスを強く感じさせます。

それはバンドが弾き出すサウンドばかりでなく、
フェラ・クティの歌い口を強く思わすジェドゥの歌いっぷりのせいでもありますね。
いやあ、かっこいいですよ、ジェドゥの歌いぶり、クールです。
アフリカン・スタイリッシュと言いたくなりますね。

そして、“Teacher” という曲の作詞は、なんとフェラ・クティとクレジットされています。
曲のタイトルから、“Teacher Don't Teach Me Nonsense” かと思ったら違う曲で、
作曲はジェドゥによるもの。ジェドゥはフェラとも親交があったんですね。

ジャジーなアフロ・ファンクでジャムバンドふうの演奏があったり、
スティールドラムのサンプルを使ったポップなライト・ファンク調ありと、
聴きどころも多彩で、タイトル曲はラテン・タッチのイントロで始まるアフロ・ラテン調。
といっても、そのリズムは、クラーベというよりベル・パターンぽく、
ほかでもベル・パターンのリズムがはっきり聴き取れるところが、ガーナらしいですね。
むしろ印象的なのは、典型的なハイライフのメロディがまったく出てこないことで、
その意味では、ハイライフ色のないアフロ・ファンク・アルバムとなった新作なのでした。

Gyedu Blay Ambolley "KETAN" Agogo AR087CD (2017)
コメント(2)