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蘇る南ア・ブラックネス バファナ・ンハラポ [南部アフリカ]

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初めてその名を聞く、南ア黒人歌手のデビュー作。
なんとノルウェイのジャズ・レーベル、ジャズランドからのリリースで、
プロデュースとミックスを、
ブッゲ・ヴェッセルトフトが手がけているというのだから、へえ~。

どんなアルバムになっているのやら、まったく想像もつかずに聴き始めたんですが、
これが予想だにせぬ、すばらしい仕上がり。
期せずして南ア大衆音楽のエッセンスが詰まった内容に、いたく感心してしまいました。

サックス、トランペット、トロンボーン、チューバ、ドラムスに、
サポート・ヴォーカルを一人加えた、ベースレスのブラス・バンド編成は、
南ア音楽ファンなら、往年のマラービを思い起こさずにはおれません。

このアルバムがユニークなのは、
そんなマラービの再現を狙ったのでは、まったくなさそうなところ。
ブッゲが南ア音楽に造詣があるような話は聞いたことがないし、
メンバーの名前を眺めてみても、サポート・ヴォーカリストとドラマー以外は
全員ノルウェイ人のようで、マラービを知っているとは、到底思えません。
バファナ・ンハラポの曲をブラス・バンド・スタイルで演奏してみたら、
はからずもマラービみたいになってしまった、みたいなところがいいんですよ。

オープニングはサポート・ヴォーカルとのア・カペラで始まり、
バファナのヴォーカルは、のんしゃらんとしていて、上手くはないものの味があり、
エネルギッシュに歌うと、はっちゃけた表情をのぞかせ、魅力があります。

CDにはバファナ・ンハラボに関するインフォメーションがいっさいなく、
いったいどういう人なのかと思って調べてみると、76年ソウェトの生まれなんですね。
父親は名コーラス・グループのキング・スター・ブラザーズのメンバーというのだから、
アパルトヘイトのもっとも過酷だった時代に幼少期を過ごしたとはいえ、
ソウェトの音楽や演劇など、ズールーの大衆文化にどっぷりとつかり、
南ア大衆音楽の豊かな環境のもとに育った人なのでしょう。

ロックやジャズ、ファンクなどを貪欲に吸収しながら、ズールー語で歌うとともに、
ジョハネスバーグの詩の舞台で見た、ハンドメイドのパーカッションに刺激されて、
どこの家にもある、ありふれたスズのカップといった家庭用品をパーカッションとする、
インダストリアル・パーカッショニストとなったそうです。

パーカッショニストとして、
ポップ・グループのクワニ・エクスペリエンスに9年間在籍したほか、
パーカッション・カルテットのL.A.P(ライヴ・アフリカン・パーカッション)でも
アルバムを残したのち、ソロ活動に転じたとのこと。
ブッゲ・ヴェッセルトフトとは、
クワニ・エクスペリエンス時代にノルウェイへツアーして、交流ができたようです。

共演歴に、ブシ・ムションゴ、ポップス・ムハンマド、マダラ・クネネ、
ダブ・ポエットのムタバルカといった名が挙がるとおり、
スピリチュアルな資質もうかがわせる、南ア伝統のブラックネスを感じさせる逸材です。

Bafana Nhalapo "NGIKHUMBULE KHAYA" Jazzland 3779185 (2017)
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