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キルギスへのイントロダクション オルド・サフナ、グルザダ [中央アジア]

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キルギス音楽、初体験。

日本口琴協会の直川礼緒さんの招きで、
キルギスの伝統音楽グループがやってくるというので駆け付けた、
11月24日高輪区民センター。
05年に愛知万博で来日したというオルド・サフナは、今回が2度目の来日だそう。

長棹で3弦の擦弦楽器コムズ3人と胡弓クル・クヤック、
チェロに似たバス・クヤックの弦楽器5人に、笛が2人と
ジェンベ2台、バス・タム、木魚、シンバルを並べたパーカッションの8人編成。
弦楽器の5人は、持ち替えで口琴も演奏します。

オープニングは、キルギスに伝わる英雄叙事詩を吟じる語り物が披露されました。
マナスチと呼ばれる語り部のおじさんが吟じるんですが、これがなかなか野趣があって、
味わい深いものでした。言葉がわからないと外国人にはきついからか、
冒頭1曲しかやってくれませんでしたけれど、もっと聴いてみたかったですね。

オルド・サフナの演奏は、しっかりとディレクションされたもの。
笛のハーモニーや弦楽器のアンサンブルは、かなり計算されたアレンジが施されていて、
これ、譜面に落としてあるんじゃないかと思えるような曲もありました。
伝統音楽といっても、素の民謡といったものではぜんぜんなくて、
伝統音楽の要素を精緻に再構築したグループという感じ。
そのせいか、その洗練された演奏は、映画音楽のようにも聞こえましたね。

00年のデビュー作CDも、キリル文字がいっさい書かれておらず
グループ名もタイトルも、すべてアルファベット表記。
バイオや楽器解説などすべて英語で書かれていることからもわかるとおり、
外国人向けに制作されていることがわかります。

コムズの3人がすごい業師たちで、それぞれ曲弾きをするのは、
なかなかの見ものでしたよ。
弦の指さばきに、3人それぞれ個性があって、
エッジの立たない柔らかなナイロン弦の響きを粒立ちよく弾く者あり、
弦を弾いた指でわざとボディにあたるような弾き方をする者など、
個性豊かな奏法にも目を奪われました。
ボディを指で叩くパーカッションのような奏法を交えたり、タッピング奏法使いなど、
あらん限りの技を繰り出すこと、繰り出すこと。
しまいに楽器を肩に載せたり、顔にあてたまま弾いたりと、見せ場を作っていました。

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そして、ゲストとして登場した女性歌手のグルザダが、スゴかった。
最初に歌ったア・カペラのスケールの大きな歌いぶりに、ノックアウトをくらいました。
歌に込められたエナジーがハンパなくって、
歌を聴いているのに、まるでコンテンポラリー・ダンスの
ソロ・パフォーマンスを観ているような錯覚に陥りましたね。
いや、この人、タダもんじゃないぞとドギモを抜かれ、
家に帰って、14年に出したというデビュー作を聴いてみましたが、
これがまたすごい力作です。

伝統音楽をベースとして、オルタナティヴなニュアンスもある、
モダンなサウンドにデザインされたプロダクションが見事。
このままインターナショナルに通用するレヴェルで、
トルコやギリシャのオルタナティヴあたりと親和性がありそう。
サラーム海上さんや松本晋也さんに聞かせてみたい、なんてことも頭をかすめました。

キルギスのもっとディープな民謡やポップスを
聴いてみたいという欲望にかられた、刺激的な一夜でした。

Ordo Sakhna "THE MUSIC OF THE LEGENDS" Ordo Sakhna no number (2000)
Gulzada "TOLGONUU" Gulzada no number (2014)
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