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エチオ演歌は人力演奏で ネッサネット・メレセ [東アフリカ]

Netsanet Melesse  DOJU  BEST OF NESANET MELESSE’S OLD COLLECTION.jpg

いい女っぷりですねえ。
艶然とした笑みを浮かべる、エチオピアのヴェテラン女性歌手ネッサネット・メレセの新作。
若い頃のチャーミングな容姿から、なじみの店のママみたいな雰囲気に変わったとはいえ、
ネッサネットのCDカヴァーには、いつも男ごころをソソられますよ。

今作はタイトルにあるとおり、ネッサネットの過去の持ち歌のセルフ・カヴァー集。
ネッサネットが世界に飛び出した、92年のインターナショナル・デビュー作
“DODGE” からは、オープニングの“Eyenamaye” はじめ、
“Minew Jal” “Shegeye” “Tizita” の4曲がカヴァーされています。
このインターナショナル・デビュー作をプロデュースしたのは、
実は、フランシス・ファルセト。これ、意外に知られていないんじゃないかな。
ファルセトが「エチオピーク」シリーズを始める5年前の仕事です。

Netsanet Mellessé  DODGE.jpg   Netsanet Mellesse  SPIRIT OF SHEBA.jpg

ちなみにこのフランス、ドナ・ワナ盤は、翌93年に曲順とタイトルを変え、
アメリカのシャナチーから“SPIRIT OF SHEBA” のタイトルでリリースされました。
日本ではこのシャナチー盤がよく出回ったので、
オリジナルのフランス盤を知らない人がほとんどかもしれません。

さて、話を戻して、このアルバム、大傑作であります。
若い頃のスウィートな歌い口も魅力的でしたけれど、
円熟した熟女のこぶし回しもオツじゃないですか。
オリジナル・ヴァージョンを凌ぐんじゃないかというところも、多数あり。
これまでネッサネットの最高作は、エキスプレス・バンドをバックに歌った
04年の“FURTUNA” と思ってきましたが、本作と交替していただきましょう。

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何がそんなにいいって、バックです。
なんとアルバム全編、生ドラムスによる人力演奏なんですよ!
いやあ、嬉しいじゃないですか。
PCで制作するDTMが、すっかり標準仕様となった現在のエチオ・ポップで、
キーボード、ギター、ベース、ドラムス、ホーン・セクションの面々が、
スタジオに集まってレコーディングするバンド・サウンドのなんと新鮮なことか。
贅沢なホーン・セクションの鳴りっぷりといったら。

ギターを弾いているのは、間違いなくギルム・ギザウですね。
トーンやリックでわかりますよ。
3・7・10曲目のエチオ・ジャズ・マナーなアレンジも、
ギルムがやっているんじゃないのかな。
クレジットがゲエズ文字で読めませんが、ブラインドで自信あります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-03-04

ことさらエチオ・オールディーズを意識するわけでなく、
中庸なコンテンポラリー・アレンジのままに、
黄金時代のサウンドを引き継いだ、
イマドキのエチオ演歌となっているところが、嬉しいですねえ。

そういえば、一昨年ヴェテラン男性歌手のエフレム・タムルが
再結成したロハ・バンドとリユニオン・アルバムを出したこともありましたね。
あれも人力演奏によるバンド・サウンドだったよなあ。
やっぱりねえ、打ち込みと人力演奏とじゃあ、グルーヴが違いますよ。
エチオ・ポップはこういう動きが主流となって、
人力演奏へ本格的に回帰してもらいたいなあ。

Netsanet Melesse "DOJU : BEST OF NESANET MELESSE’S OLD COLLECTION" Truth Network Corporation no number (2017)
Netsanet Mellessé "DODGE" Dona Wana 198682 (1992)
Netsanet Mellesse "SPIRIT OF SHEBA" Shanachie 64044 (1993)
Netsanet Mellese "FURTUNA" Afr Rec no number (2004)
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