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インターネット世代の作法 セフィ・ジスリング [西アジア]

Sefi Zisling  BEYOND THE THINGS I KNOW.jpg

やっぱり書いておこうかな。
なんだかんだで、もうふた月近く、ずっと聴いてるんだから。
去年いくつか買ってみたイスラエル音楽の新潮流が面白かったことは、
すでに書いたので、これはもういいかと思ったんですけれども。

イスラエルで引く手あまただというトランペッター、セフィ・ジスリングのソロ・アルバム。
ロウ・テープスのプロデューサー、リジョイサーとともに作り上げた作品です。
リジョイサーが奏でるウーリッツァーの甘美な音色は、
バターリング・トリオで経験済ですけれど、
独特のコード感が生み出す浮遊するサウンドと、たゆたうグルーヴが、
とにかく心地よいったら、ないんですよ。

演奏の基本は、セフィとリジョイサーの二人で作り上げていて、
曲によって、ヴォーカル、ベース、ドラムス、ギター、コンガ、
サックスとトロンボーンが加わるというプロダクション。
そのサウンドはアーバンなムードに溢れていて、オシャレでもあるんですけれど、
その低体温ぶりには、フュージョン的なニュアンスがまったくなく、
エレクトロニックなオルタナティヴ・ジャズという装いになっているんですね。

プログラミングが、どうしてこんなにオーガニックに響くんだろうなあ。
生演奏とプログラミングを、こんなふうに絶妙に溶け合わせることのできる才能って、
まさに新世代ならではと思えますね。
それともうひとつ、多様な音楽の消化のしかたも。

パンデイロがサンバのリズムを叩いていても、ドラムスやベースは、
サンバとまったく違うアクセントでビートを鳴らす2曲目や3曲目、
リジョイサーがプログラミングした親指ピアノのフレーズのループの上を、
セフィのトランペットがゆうゆうと泳ぐように吹く7曲目に、いたく感心しました。

音楽家が吸収してきた多様な音楽要素が、ごく自然ににじみ出ているんですね。
サンバやアフリカ音楽をやるつもりはさらさらなく、
自分の音楽に参照しているだけなので、
フェイク、インチキ、ツマミ食いといった悪印象を受けないんですね。
こんなところに、世界の情報にアクセスできて、
さまざまな音楽を容易に習得できるようになった、インターネット世代を実感します。

Sefi Zisling "BEYOND THE THINGS I KNOW" Time Grove Selections no number (2017)
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