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テランガが溢れた夜 エルヴェ・サンブ [西アフリカ]

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ペイ爺さんに大感謝です。
エルヴェ・サンブの記事につけてくれたコメントのおかげで、
ライヴを見逃さずに済みました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-06-01

6月15日、代官山の晴れた空に豆まいて。
いやぁ、スゴいライヴでした。
バンド・メンバー全員、セネガル屈指といえる名手が勢揃いしていて、
こんなに演奏力の高いバンドは、セネガル現地でも、ちょっといないんじゃないの。

サバールのアリュヌ・セックは、
セネガルの偉大なパーカッション・オーケストラ・リーダー、
ドゥドゥ・ンジャイ・ローズに捧げたソロ・プレイを披露するなど、
切れ味鋭い演奏を聞かせるほか、
タス(プレイズ・ポエトリー)も繰り出し、ドラマーのマコドゥ・ンジャイとともに、
ムチのようにしなやかで強靭なリズムを叩き出していました。

主役のエルヴェ・サンブはエレクトリックを封印して、
アクースティック・ギターで通したのは、
新作“TERANGA” お披露目のライヴだからなんでしょうね。
ベースのパテ・ジャッシは、ユッスー・ンドゥールやシェイク・ローのバンドの
ツアーやレコ-ディングへファースト・コールのミュージシャンで、
デトロイトを拠点にジャズ・ミュージシャンとしても活躍するスゴ腕ベーシスト。
ライヴではヨコ・タテのベース両刀使いで、
ソロで披露したテクニックには目を見張りました。
どうやらエルヴェは、パテからジャズを学んだみたいで、「ぼくの先生」と呼んでいました。

そして、一番の呼び物が、ヴォーカリストにアルファ・ジェンを連れてきたこと。
オーケストラ・バオバブの看板歌手で11年に亡くなったンジュガ・ジェンの息子です。
“TERENGA” のラスト・トラックで、生前のンジュガ・ジェンが歌っていて驚いたんですが、
やはりあのセッションがンジュガ・ジェンのラスト・レコーディングだったとのこと。
その曲を、息子アルファが歌ってくれるとは、グッとくるじゃないですか。

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そのアルファの歌いぶりの素晴らしさといったら、言葉がありませんでしたね。
グリオを思わせるパワフルな歌い声は、アフリカの伝統が誇る遺産そのものといえる響きで、
カンゲキが抑えられませんでした。
終演後にアルファに話を聞いたところ、オーケストラ・バオバブの新作
『ンジュガ・ジェンに捧ぐ』のヨーロッパ・ツアーに、
アルファは帯同して歌ったんだそうです。そちらも観たかったですねえ。

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エルヴェ・サンブのギターは、ジャズから学んだ運指やピック使いをするものの、
一方で、セネガルの伝統的な弦楽器ハラム(ンゴニと同じ弦楽器)のフレーズを
写し取ったプレイをしたり、曲のマテリアルに合わせて多彩な弾き分けをします。
こういうところに、ジャズを語法として学び取った新世代のしなやかさがありますね。
コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」が、
いつのまにかセネガル伝統色濃い曲にスイッチするメドレーなど、その白眉でした。

新作のレパートリーで通した今回のライヴは、
ジャズ色のないセネガル一色といった音楽だったんですが、
ハイライトは飛び入りしたタマ奏者でした。
ちょうどぼくの後ろの客席に座っていたセネガル人が、
おもむろに立ち上がってステージにあがり、タマを叩き出したのには仰天。

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そのタマの演奏の巧いことといったら! インタープレイも自在で、
ただもんじゃないぞ、この人誰と思ったら、終演後わかったことですけれど、
“TERENGA” にも参加していたサンバ・ンドク・ムバイとのこと。
そりゃあ、巧いわけだわ。
シェイク・ローのバックなどで、実力派タマ奏者として知られる有名人。
なんと今年の頭から日本に滞在しているとのことで、
サプライズ・ゲストとして登場したようなんですが、
おかげで、さらにセネガル伝統色の強いサウンドになりました。

サンバはエルヴェが駆け出しの頃から知っているらしく、
「こいつはギター小僧で、若いときから練習の虫だったんだ。
それが、セネガルのトップ・クラスのこんなスゴイ面子と
一緒にやるようになるなんて、スゴイぜ」とMCで感極まったように言っていました。
客席から先輩ミュージシャンが登場するという、嬉しいハプニングは、
ライヴの空気を一気にフレンドリーな場に変えて、
セネガルのおもてなし精神<テレンガ>を満ち溢れさせたのでした。

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Herve Samb "TERENGA" Euleuk Vision no number (2017)
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