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歌謡モーラムの女王様 バーンイェン・ラーケン [東南アジア]

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タイのモーラムを聴き始めた90年代は、ケーンやピンを伴奏に歌う、
昔ながらの伝統モーラムを先に好きになってしまったせいで、
西洋楽器を取り入れたルークトゥン・モーラム、いわゆるポップ・モーラムには、
あまり魅力を感じることができませんでした。

西洋音楽の取り入れ方が中途半端というか、
インドネシアのダンドゥットのように、西洋音楽を取り入れながら、
自分たちの音楽の独自性を輝かせるのではなく、
安直な折衷によって、せっかくの独自性をむしろ弱めているように
思えてならなかったからです。

そんな不満を抱えていた頃に出た、バーンイェン・ラーケンの“MEE MAI MOR LAM” は、
こういうサウンド・プロダクションで聴かせてほしかったんだよと、
叫びたくなる快作でした。
バーンイェン・ラーケンといえば、
70年代の初め、モーラム歌謡化の波に乗って登場したアイドル・モーラムの先駆けで、
すでに当時ポップ・モーラムの女王として君臨していた歌手です。

98年に出した本作は、ケーンやピンをたっぷりとフィーチャーして、
ラム・クローンの新装アップテンポ版ともいえるラム・シンや、
地方のさまざまなモーラム、ラム・コーンサン、ラム・タンワーイ、ラム・コーンケーン、
ラム・カーラシンなどを歌った意欲作で、
伝統モーラムのラム・クローンをしっかりと習得した実力派ならではの、
練り上げられたこぶし回しを堪能できる傑作でした。

Banyen Raakaen  LAM PHLOEN DAEN ISAN.jpg   Banyen Raakaen  LAM PHLOEN GLOM LOK.jpg

バーンイェンがデビューした70年代当初の初期のラム・プルーンのサウンドは、
90年代半ばにJKCやサウンドがCD化していたので、
ケーンが生み出すリズムに、ヘヴィーなベースが絡んで
グルーヴを巻き起こす快感は、すでに体験済み。
この方向性をなぜ進化させなかったのかとずっと思っていただけに、
本作はまさしく快心のアルバムでした。
15年にバーンイェンが来日した時に、本作にサインを入れてもらいましたけれど、
ご本人も自信作といってましたもんねえ。円熟期に入ったバーンイェンの代表作ですよ。

Banyen Raakaen  KHUEN PHEN KHEN FAI.jpg

そして、バーンイェンの初期のラム・プルーンを楽しめるレコードも
1枚だけ持っていたんですけれど、これがデビュー・アルバムだったとは、
昨年出た本『旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド TRIP TO ISAN』
を読むまで知りませんでした。
この本によると、バーンイェンのデビュー・アルバムは2枚あり、
ぼくが持っているソムチャイ・トンカオ盤がオリジナルで、
よく見かけるピン・ケーン盤もまったく同内容とのこと。

Banyen Rakkaen  LAM PHLOEN WORLD-CLASS.jpg

そのピン・ケーン盤のジャケットを使ったバーンイェンの初期録音の編集CDが
日本盤で出たんですが、これがスゴイ。
前半はデビュー作の曲が続きますけれど、シングル盤から取った中盤が聴きもの。
“Lam Yao Salab Toei” の艶っぽいこぶし回しに絡む、重厚なオルガンに降参です。
終盤にはJKC盤収録の曲も入っていますけれど、聴いたことのない曲も多く、大感激。
若くみずみずしいバーンイェンの歌いっぷりも悩ましい、最高作です。

Banyen Raakaen "MEE MAI MOR LAM" MMG MS049839 (1998)
Banyen Raakaen "LAM PHLOEN DAEN ISAN" JKC JKCCD154
Banyen Raakaen "LAM PHLOEN GLOM LOK" Sound SCD2015
[LP] Banyen Raakaen "KHUEN PHEN KHEN FAI" Somchai Thongkhao HLP2044
Banyen Rakkaen 『LAM PHLOEN WORLD-CLASS : THE ESSENTIAL BANYEN RAKKAEN』 EM EM1174CD
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