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北中部ヴェトナムの人情 グエン・フオン・タイン [東南アジア]

Nguyễn Phương Thanh  NỖI NHỚ MIỀN TRUNG.jpg

ヴェトナムの新作がまとまって手に入りました。
それも全部ザンカー(民歌)系の歌手ばかり。
ここのところ、ボレーロと称される抒情歌謡路線の歌手ばかり聴いていたので、
こうした民謡系の歌手をまとめて聴くのは、ひさしぶりな気がします。

最初に聴いたのは、グエン・フオン・タインという若い女性歌手のアルバム。
第一声で、その高い歌唱力がくっきりとわかる人ですね。
クリアーな発声、ヴィブラートやメリスマ使いの技巧ともに、ほれぼれするウマさです。
口腔の中で、まろやかに膨らむ豊かな発声に、才能を感じさせます。
高音域へ駆け上っていくシャープな歌いぶりも清廉で、胸をすきますよ。
ハイ・トーンがキンキンしないのは、丸みを帯びた発声ゆえですね。

コンテンポラリー・サウンドの中に、ダン・バウ(一弦琴)、ダン・チャン(筝)、
サオ(竹笛)といったヴェトナムの音色を織り交ぜたプロダクションも、
デリケイトに組み立てられていて、申し分ありません。
曲の雄大さを、弦オーケストレーションのアレンジが鮮やかに演出しています。

88年北中部ゲアン省ドールオンに生まれたグエン・フオン・タインは、
11年のサオマイ・コンテストの民歌部門で2位を獲り、12年にデビューした歌手。
13年に歌手のティエン・マインと結婚し、その後長男を出産し、
4年間のブランクを経ての新作だそうです。
ティエン・マインと結婚したのが11月23日だそうで、あれまあ奇遇ですねえ、
ワタクシの結婚記念日と一緒じゃありませんか。すみません、どーでもいいことであります。

育休明けの本作は、故郷に帰ってのアルバムということで、
ジャケットも故郷のラム川を背景に、タイトルは『中部の想い出』と、
故郷にちなんだ曲を歌っています。
ハイ・トーンに伸び上がるパートと、しっとりと穏やかに歌うパートとのバランスもよく、
歌いすぎることのない、抑制の利いた歌唱が見事です。
なんでもハノイ文化大学で歌の教師もしているとのこと。なるほどであります。

Nguyễn Phương Thanh "VOL.3 : NỖI NHỚ MIỀN TRUNG" Thăng Long no number (2017)
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