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三代目東京人も60年間知らず おしゃらく [日本]

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この夏、『阿波の遊行』を聴いて四国の盆踊り歌にヤラれ、
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-08-12
やっぱりこういう豊かな芸能は、
地方に行かなきゃ見つからないんだろうなあなどと、
ぼんやり思ったもんですけれど、なんと今度は東京ですよ、東京。

「おしゃらく」というその名すら初耳という自分の不明ぶりが、
情けない限りなんですけど、江戸川区の葛西から千葉の浦安にかけて
伝わってきた、念仏踊りをルーツとする芸能だそうです。
いちおう東京人三代目で60年も生きてきたのに、まったく知らなかったという。
不明ついでに、まずは予備知識なしに向き合ってみようじゃないのと、
ブックレットの解説を読まずに聴いてみたんですが、
いやあ、圧倒されましたよ。
職業歌手には到底求められない、なまなましい唄の数々に。

明治生まれの爺さん婆さんたちの芸達者なことといったら。
おばちゃんたちが歌うあっけらかんとした明るい猥歌も、突き抜けていますねえ。
野趣溢れるのは唄ばかりでなく、猛烈にグルーヴする三味線も圧倒的。
民謡に三味線が入るようになったのは、昭和になってからというのが通説ですけれど、
おしゃらくでは、すでに明治の頃から弾かれていたというのだから、むちゃくちゃ早い。
グナワのゲンブリをホウフツとさせるワイルドぶりですよ。

念仏踊りにさまざまな遊興の芸能が交わってきたという痕跡は、
遊芸人がやっていた歌舞伎の演目が取り込まれていることにも、見て取れます。
念仏踊りのようなダンス・ミュージックあり、段物のような聴きものありと、
村の衆が念仏講で盛り上がっていた様子が、ダイレクトに伝わってくる芸能ですね。

圧倒されっぱなしで聴き終えたあと、あらためて解説を読んでみましたが、
監修した民謡DJユニットの俚謡山脈がおしゃらくとどうやって出会い、
この音源をCD化したのかという話には、ワクワクさせられっぱなしでした。
CD解説にこんなにコーフンさせられることは、なかなかないことです。

解説を読んで、64年にコロムビアから出された『東京の古謡』という5枚組LPに、
おしゃらくが10曲収録されているほか、74年にはキングから
『無形文化財 おしゃらく』というLPが出ていることも知りましたが、
いつもなら「これは早速探さなくちゃ」となる自分も、
今回はそんな気にはなりませんでしたね。

それは、伝承者の自宅に残されたプライヴェート録音から厳選した本CDの方が、
スタジオ録音のLPなどより、はるかにイキイキとした演唱であることは、
聞かずしてもわかるからです。
野趣溢れるホンモノの民謡は、こういうプライヴェート録音や
フィールド録音の中でしか、味わうことができませんからね。
あ、でも解説の中に書かれていた『おしゃらく』という本は、早速探して読んでみよう。

葛西おしゃらく保存会ほか 「おしゃらく」 エム EM1181DCD
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