SSブログ

戦後レンベーティカの恋唄 マリカ・ニーヌ [東ヨーロッパ]

Marika Ninou  MIA VRADIA STOU TZIMI TOU XONTROU.jpg

これまた原田さんから、するりと差し出された温故知新盤。
アラブの旧作もそうですけど、ギリシャも古いCDがまだ結構残っているらしく、
CD衰退の現在、CDショップとしては古いカタログに活路を見出すのは、
手堅い選択でありますね。

30年くらい前によく聴いた、レンベーティカの名女性歌手マリカ・ニーヌ。
レンベーティカをギリシャの国民歌謡に引き上げたヴァシリス・ツィツァーニスとのコンビで
有名になった人ですけれど、このCDは見たおぼえがないなあ。
バック・インレイを見るとライヴ録音らしく、ありがたくいただいてまいりましたよ。

55年にアテネの「太っちょジミー」というタヴェルナ(居酒屋)で
アマチュア録音されたものが、77年に発掘されてLP化され、
92年にCDリイシューされたものとのこと。
55年というと、マリカはすでにツィツァーニスとのコンビを解消し、
ソロ歌手として独立していた時期。太っちょジミーは、
ツィツァーニスとのコンビ時代からレギュラー出演していた馴染みのお店です。

ライヴ録音といっても観客の拍手はカットされていて、
録音はあまりよくありませんが、臨場感がすごいんです。
ブズーキ、ヴァイオリンなどの弦楽器に、ピアノ、アコーディオン、
さらに男性コーラスも加わった伴奏のグルーヴィなことといったら。
なまめかしいヴァイオリンや、硬い弦の響きがリズムのエッジを立てるブズーキなど、
戦前とは異なる近代化されたレンベーティカ・サウンドが楽しめます。
そっけなく歌う、マリカの張りのあるヴォーカルも、なまなましいですね。

この2年後には癌がもとで亡くなってしまう、晩年の時期のマリカですけれど、
ここで聞かれる歌声からは、病気の影はまったく感じ取れません。
54年に癌の手術をしていて、その翌年の録音になるわけですけれど、
このギリシャならではの歌声には、35歳の若さで亡くなってしまったのが、
つくづく悔やまれます。レンベーティカからライカ時代に移っても、
存分に活躍できたはずなのに。

レンベーティカというと、ついSP時代のディープなスミルナ派ばかり
聴き返してしまうんですけれど、レンベーティカが消滅する50年代に、
最後の輝きを放ったピレウス派の、
センチメンタルな恋唄の良さが詰まった好盤でした。

Marika Ninou "MIA VRADIA STOU TZIMI TOU XONTROU" D.P.I. Atheneum D.P.I.066
コメント(0)