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ハイランドと東欧を繋ぐバグパイプ ブリーチャ・キャンベル [ブリテン諸島]

Brìghde Chaimbeul  THE REELING.jpg

スモールパイプス(小型バグパイプ)の持続するドローンのディープな音色に、
金縛りとなってしまう深淵な音楽。これを演奏しているのが、
まだハタチの女性だというのだから、驚かされます。

ブリーチャ・キャンベルは、スカイ島の音楽一家に育ったパイプ奏者。
16年にBBCラジオ2のヤング・フォーク・アワードを受賞、
翌17年にはスコッツ・トラッド・ミュージック・アワードの新人部門に
ノミネートされたという若き実力者です。

7歳の時、女性バグパイプ奏者ローナ・ライトフットの
演奏を聴いて感銘を受け、パイパーを志したのだそうで、
現在82歳となったそのローナもレコーディングに参加し、
パイプのフレーズを教えるときの口三味線を披露しています。

こういう口三味線って、一般的にはリルティングと呼ぶと思うんですけれど
ライナーのクレジットには、キャントリッチド Canntaireachd と書かれていて、
調べてみたら、スコティッシュ・ガーリックでパイプを模したチャントをそう呼ぶんだそう。

18世紀のハイランドの古謡をはじめとする伝統曲をレパートリーに、
スモールパイプスのソロ演奏を聴かせるんですが、
凄みさえ覚えるリズムの深さには圧倒されるばかりです。

興味深いのは、ブルガリアのバグパイプ音楽もレパートリーとしていることで、
なんでも17年にブルガリアを訪れた時、
ブルガリアのバグパイプ、ガイダを知って惚れこみ、
ガイダの演奏曲を習ってきたんだそうです。
バグパイプ音楽でハイランドと東欧の古層をつなぐ試みは、
今後の彼女の音楽を発展させていく、大きなファクターとなりそうですね。

ブラックアイル半島の由緒ある教会でレコーディングされたという本作、
プロデューサーを務めるイダン・オルークのフィドルや、
コンサーティーナが加わる曲もありますが、
ブリーチャの重量感あるスモールパイプスが、圧倒的な存在感を示した作品です。

【追記】2019.6.22
「ブリッド・チェインビョール」とあやふやなカナ表記を書いていたところ、
山岸伸一さんから「ブリーチャ・キャンベル」と発音することを教えていただきました。
修正させていただきます。山岸さん、ありがとうございました。

Brìghde Chaimbeul "THE REELING" River Lea RLR003CD (2019)
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